Kim Gordon / The Collective

海外のレビューの中にはトラップという単語を用いたものもあり、それにしてはハイハットがシンプル過ぎる気はするものの、ヘヴィなサブベースの音圧を聴くと確かにその気持ちも解る。何れにせよヒップホップ由来のビートを基盤にした作品であるのは間違い無…

Killer Mike / Michael

M1からしてトラップとOutkastの出会いという感じで、André 3000やCeeLo GreenからYoung ThugやFuture、JIDまで、地元アトランタの同胞と後輩を総動員してAタウンのサウンドを総括・統合するような内容に仕上がっている。出身ではないものの、かの地に大いに…

Idles / Tangk

ブレクジット以降のUKのポスト・パンク、所謂クランク・ウェイヴと呼ばれるバンドの中では、例えばBlack Country, New RoadやSquidに較べると、中にはピアノ主体のバラードもあったりはするものの、相対的にギターとベースの存在感が強く、歌自体もメロディ…

Oneohtrix Point Never / Again

Daniel Lopatin曰く「思弁的自伝」的な作品であるとの事で、テーマ的に「Garden Of Delete」との類似性が指摘されているようだが、自伝的要素というのが過去の自らの音楽的影響と対峙する事を意味しているとすれば、「Garden Of Delete」に於けるグランジと…

Kali Uchis / Orquídeas

Kali Uchisの新作にJam Cityが参加しているらしいという事前情報から、早速M1のハウス/UKガラージ風がそれなのかと思ったが、何とこちらはSounwaveが手掛けたもので、全くこの男の引き出しは何処まで多いのか。本当に全てが同一人物の仕事なのだろうかと訝…

MGMT / Loss Of Life

ディスコやシンセ・ポップ色の濃かった前作「Little Dark Age」に較べて全体的にアコースティック・ギターの音色に存在感があり、「Oracular Spectacular」の頃のサウンドへの揺り戻しを感じさせる。特にM7は久々に例えばThe Byrdsの子孫のようなMGMTのサイ…

Future Islands / People Who Aren't There Anymore

単にツイン・ギターの代わりにシンセを使ったエモ、と言えばそれまでといった感じのサウンドではあるが、ゴスのようともニュー・ロマンティクスのようとも言えそうなヴォーカルに違和感があり過ぎて、ひょっとしてある種のジョークなのだろうかと訝しんでし…

Sleater-Kinney / Little Rope

先ずは低音域のヘヴィネスが特徴的で、恐らく再結成以降で最も騒々しいサウンドが展開されている。一方でSt. Vincentを招聘して行われた「The Center Won't Hold」に於ける実験の成果も損なわれてはおらず、エレクトロニクスやキーボード類の音色とフィード…

Speakers Corner Quartet / Further Out Than The Edge

Joe Armon-JonesやShabaka Hutchingsの参加からEzra CollectiveやSons Of Kemetのようなサウス・ロンドン・ジャズを想像していたが、両者のようなダンス・ミュージックとしての機能性は希薄。強靭なリズム隊が生み出すビートには、M1のハウスやM11のダブステ…

Jockstrap / I<3UQTINVU

本作はリミックス・アルバムと言われているようだが、実際には「I Love You Jennifer B」の音源のセルフ・サンプリングで構築されたリコンストラクトと言う方が正しいように思える。その結果は断片的で本編以上にスキゾフレニックではあるが、(知っている曲…

Sampha / Lahai

先ず耳に飛び込んでくるのはM1やM2、M10等のドラムンベース風のブレイク・ビーツで、その生ドラムの音色はアルバム全体に渡って存在感を放っている。特にSpeakers Corner QuartetのメンバーでもあるKwake BassやYussef Dayes等のサウス・ロンドンのジャズ・…

The Smile / Wall Of Eyes

M1の優雅なストリングスは「A Moon Shaped Pool」との連続性を感じさせ、最早Thom YorkeとJonny Greenwoodの2人が何をやろうと、過去のRadioheadの作品や楽曲を連想させてしまうというのは実に難儀な話ではある。Radioheadというバンドの偉大さの裏返しであ…

Sparklehorse / Bird Machine

ファズ・ギターとチープなリズム・ボックスの組合せがローファイなM1は、とても自殺した人間がその間際に残したものとは思えない程飄々としているが、以降はM6のパンクを除いてJeff Tweedyのソロにも通じるような、穏やかで長閑なフォーク・ロックが展開され…

Skrillex / Quest For Fire

以前からFKA TwigsやBeyoncéの作品でその名前を見掛ける度に引っ掛かっていたが、JokerやFred Again..はともかくして、Missy ElliottやMr. OizoにFour TetからEli Keszlerまでもが参加しているとなっては、愈々無視も出来なくなった。近影を見ると、EDM全盛…

Lil Yachty / Let’s Start Here.

冒頭のシンセの音色から、やはり代わり映えしないエモ・ラップ/ポップ・ラップかと思いきや、蓋を開ければ粘着質なエレクトリック・ギターがDMBQを思い起こさせるようなサイケデリック・ロックが展開されている。プリズムのように乱反射するオルガンが特徴…

Earl Sweatshirt & The Alchemist / Voir Dire

Danny BrownはThe Alchemistと仕事が出来る事で自分が成功したのを実感するという旨の発言をしていたが、振り返ってみるとArmand HammerやMikeにもThe Alchemistと共同で作品を制作した実績があり、現在オルタナティヴを希求するラッパー達にとって、The Alc…

Danny Brown / Quaranta

確かにフリーキーさは減衰し落ち着いた感があり、Danny Brownの作品の中では間違い無く突出して地味だとは言える。インタビューを読むと敢えてトーンダウンを企図したところはあるようで、確かにラップにトレードマークである微かに狂気を滲ませるような上擦…

Billy Woods And Kenny Segal / Maps

上音を構成する音色はジャジーなものが多いが、同時に至ってアブストラクトで、所謂ジャズ・ヒップホップと聞いて想像する類のポップなサウンドではまるでない。M5のフリー・ジャズのサンプル使いと言い、Armand Hammer「We Buy Diabetic Test Strips」同様…

Tirzah / Trip9love...???

曲単位ではメロディックで明確なソング・ストラクチャがあり、一体どうしたのかと思うくらいポップ。と言ってもあくまでTirzahにしては、という前提ありきの話であって、決してセルアウトと言う程のキャッチーさがある訳ではないし、ヴォーカルはワン・フレ…

Amaarae / Fountain Baby

例えばドラムンベースや、もしかするとダブステップやトラップもそうかも知れないが、ある音楽のスタイルそれ自体にある種の発明のような革新性や強度がある場合には、それを採用、或いは援用しているというだけでも一定の期間は何となく楽しめてしまうとい…

Armand Hammer / We Buy Diabetic Test Strips

2023年は先ずEarl Sweatshirtが、次いでDanny BrownやJpegmafia等が10年を掛けて切り開いてきた新時代のオルタナティヴ・ヒップホップが遂に百花繚乱に咲き誇った感あったが、その中でも特にBilly Woodsは主役級の存在感を放っていた。世間的にはKenny Segal…

Laurel Halo / Atlas

個人的にLaurel Haloにはトリックスターというか、ストラテジスト的なイメージがあり、決して奇を衒っているというような事ではないのだが、そのサウンドには純粋な音楽的好奇心の発露という以上の、何かコンセプチュアル・アート的な思考の存在を感じてきた…

Troye Sivan / Something To Give Each Other

M1は少しBasement Jaxxを彷彿とさせる享楽的で猥雑なラテン・ハウス風だが、この手の能天気なダンス・ポップにすっかり耐性が付いてしまったのか、意外な事に拒否反応は全く起こらない。今ならCarly Rae Jepsenなんかもすんなりと聴けてしまうかも知れない。…

Sufjan Stevens / Javelin

M1こそパーカッシヴで重量感のあるブレイク・ビーツ的で賑やかなビートが前作「The Ascension」との連続性を感じさせるが、以降の楽曲はアコースティックな音色を基調としている。Sufjan Stevens名義のフォーク・サイドの作品としては2015年の「Carrie & Low…

Animal Collective / Isn't It Now?

D'Angelo「Voodoo」を手掛けたRussell Elevadoの手による完全アナログ・レコーディングの産物であるオーガニックな音像が、「Here Come The Indian」以来に思えるある意味ローファイと言える感覚を齎しているが、単純なアマチュアリズムやエクスペリメンタリ…

The Rolling Stones / Hackney Diamonds

Mick Jaggerのヴォーカルが位相の中心にどっしりと据えられており、その年齢を感じさせないパワフルで安定感のある歌唱が、このアルバムの比較的高い評価に繋がっているものと思われるが、不謹慎だと解っていながらどうしても老人のドーピングといったイメー…

Wilco / Cousin

16ビートを刻む電子的なクリック音と遠い響きのフィードバック・ノイズに始まり、中盤でシンセ・ブラス風の奇妙な音色が合流するM1には、如何にもCate Le Bonらしいストレンジ・ポップの要素が満載だが、一方Jeff Tweedyのウェッティなメロディもオーソド…

Jamila Woods / Water Made Us

少し単純化し過ぎかも知れないが、恋愛の始まりから終わりまでの感情の移ろいがテーマとの事で、確かにM2やM3には出逢いの時期の浮き浮きとしたムードが巧く表現されている。言葉にすると実に陳腐な感じがして恥ずかしい事この上無く、また別に良い歳をして…

Loraine James / Gentle Confrontation

James Blakeがその素顔を晒したジャケットのアルバムは駄作で、その逆もまた然りという法則は近作「Playing Robots Into Heaven」でもまた正しい事が証明されただけに、このジャケットには嫌な予感しかしなかった。Whatever The Weather名義の日本公演で見た…

Jorja Smith / Falling Or Flying

J Husの近作にJorja Smithがフィーチャーされていたのはやや意外に思ったが、J Hus側からの一方的なアプローチという訳でもなかったようで、本作では逆にJorja SmithがJ Husを招いており、M1、M2と続くパーカッシヴでポリリズミックなビートからも、生存戦略…