At The Drive-In / In•Ter A•Li•A

昨年のサマーソニックでのバンドとしてのブランクを全く感じさせない鬼気迫るステージには感動すら覚えたが、復帰作となる本作もライヴの様子そのままに、「Relationship Of Command」から16年振りとはとても思えない程の初期衝動を感じさせる。
両サイドで各々無関係に弾きまくるツインギター変拍子、切迫感溢れるメロディに言葉を詰め込んだヴォーカル等は16年前と一切変わらず、Cedric Bixlerと共にバンドを始めたJim Wardの不在の影響は微塵も感じられない。

とは言え全く変化が無い訳でもなく、当時ニューメタルを中心に活躍する売れっ子プロデューサーであったRoss Robinsonの手による(オーバー・プロデュースだという批判もあった)「Relationship Of Command」に較べると、ポスト・プロダクションは簡素になり、ヴォーカルを一層前面に押し出した割には、オーバーダブは少なく、素のまま声が提示されていて、意外にも以前はOmar Rodríguez-Lópezのコーラスが重要なフックの役割を果たしていた事に気付かされる。
忙しなく働くツインギターやドラムスに較べて、ベースの単調さがウィークポイントに感じられたりもして、改めて聴くと色々な発見があるものだ。

マイナー調のコードやアップテンポは切迫感や勢いを伝える上で有効に作用しているが、それにしても余りに幅が無さ過ぎでどの曲も同じように聴こえる。
「In/Casino/Out」を彷彿とさせる唯一メジャー調のM3が清涼剤的ではあるものの、如何せん登場が早過ぎるし、「Relationship Of Command」では幾つかのミドルテンポ曲がアクセントとなっていたものだが、本作が漸くピッチダウンするのは全11曲中10曲目の事で、最早蛇足にしか感じられない。

何れにしても16年前でも、つまりはThe Mars Voltaを経ずとも作れたであろう音楽という意味で、初期衝動の賜物以外の何物でもなく、At The Drive-Inの分裂はCedrickとOmarによる、パンクスにとってのタブーであったPink Floyd「The Piper At The Gates Of Dawn」のようなサウンドの志向に始まった訳だが、このプログレ化の余韻のまるで無い原点回帰は、ポスト・ポスト・ハードコアの行き詰まりと同時に、パンクからハードコア、ポスト・ハードコアと続いたロックンロールの進化の一系統の終焉をも表象しているかのよう。
とは言え今更ロック・ミュージックに進化等を期待する筈も無く、年相応にブルージーになったりフォーキーになったりされるよりは潔く初期衝動の赴くままに疾走する若々しい(最早こんな音楽を演る若者は居ないだろうが)様が寧ろ好ましくも感じられる。