Kali Uchis / Isolation

M1のボサノヴァにM2のレゲエ、M6の気怠いダンスホールにM8のアンニュイなレゲトンと、自身の出自である南米・カリブ海サウンドをふんだんに盛り込む一方で、M5のネオ・ソウル風からM7のブギーファンク、如何にもDamon AlbarnらしいM9のクラフトワーキッシュなシンセ・ポップまで、とにかくスタイルのヴァラエティは豊か。

特にAnderson .Paak「Malibu」にも通じるオーセンティックなソウル趣味は顕著で、M4のディープ・ソウルやTyler, The CreatorBootsy Collinsを招聘したM13〜M15に至る流れはモータウン黄金期さえ思わせる。
Tyler, The Creatorの唯一無二の声の印象もあって、何処か「Scum Fuck Flower Boy」に通じる雰囲気もある。

エレクトロニックな要素は希薄で、近年のR&Bで言えばSolangeやSZAに通じるオーガニックでスムースな肌触りがあるが、もっとよりレトロスペクティブで、ThundercatやBadBadNotGoodにSteve LacyやSa-RaのOm'Mas Keithから、すっかりオルタナティヴR&Bの要人になったDave Sitekまでのビッグネームが一同に会してこれをやっているというのだから面白い。

Sounwaveが手掛けたM6やM12のモダンなプロダクションを聴けば単なる懐古趣味ばかりの作品でない事は明白だが、それでも作品全体を覆うレトロな感覚は恐らくKali Uchis自身のソングライティングの素養に依るところが大きいのだろう。
加えてやや弛緩したようなレイドバックした歌唱が、同時代のオルタナティヴR&Bのシンガーから彼女を差別化する要素となっており、リヴァービーな音像も伴って、喩えるなら真夏の午睡で観る夢のような、少しエキセントリックな倦怠感と密やかな官能を醸出している。