Gorillaz / The Now Now

ウッドブロックが刻むシンコペーションとシンセ・ストリングスがトロピカルなムードを醸出するM1に始まり、何処か微かに初期のBlurを感じさせるメロディを持ったニューウェーヴ調のM2等、Damon Albarn流のチルウェイヴ/シンセ・ポップと言えそうな作風で統一されており、最近で言えばMGMTの近作にも通じる。

ブギー・ファンクとディープ・ハウスを掛け合わせたような雰囲気のM3ではSnoop Doggという人選の妙味に思わずほくそ笑んでしまうし、Grandmaster Flash「The Message」に通じるオールドスクール・エレクトロのようなM7等も楽しめるが、M6のラウンジ風で漸くアコースティック・ギターが現れるのを除いては、全編を通じてシンセやシンセ・ベースにドラムマシンの音色以外の存在感は希薄で、音色が多彩なら必ずしも良いという訳ではないが、流石に一枚通して聴くとだれる。

Kali Uchis「Isolation」でもクラフトワーキッシュなシンセ・ポップを提供していたし、甘ったるいヴォーカルはどうしても好きになれないが、それはさて置きThom Yorkeと並ぶ90’sのイギリスが産んだディレッタントであるDamon Albarnの現在のモードがこれだと言うのは、Janelle Monáe「Dirty Computer」等の80’s志向と共振するようで興味深くはある。
尤もGorillazを含めそのキャリアを熱心に追ってきた訳ではないので、変化の程は全く分からないが。

執拗なシンセや微細なノイズのレイヤーから熱意の程が伝わらないでもないし、いつものGorillazと較べるとゲストも控え目で、それなりに丁寧に製作された感じがありもするけれど、音色にも構成にも特段特筆に値するところは見付けられず、肝心なアウトプットに10年代以降に湧いて出てきた凡百のシンセ・ポップとの違いがあるのかは良く解らない。