The Carters / Everything Is Love

「Lemonade」での妻による不貞の告発と「4:44」での夫の懺悔の次がCarter夫妻によるThe Carters、しかもタイトルが「Everything Is Love」とは、世界一のセレブ・カップルの茶番に付き合わされたような、恥ずかしいような、癪に触るような気分で流石に些か聴くのが躊躇されたが、それでも覚醒したBeyonce関連の作品には一聴の価値はある。

荘厳なストリングスをフィーチャーしたディープ・ソウル風で始まるアルバムは、「Lemonade」よりもオーセンティックなヒップホップ・ソウル作品を予想させるが、続くPharrell作で、元はMigosの曲だったというM2の、まるで「Lemonade」のラストを飾った「Formation」を想起させるアグレッシブさとの鮮烈な対比に早くも態度は軟化し、続くM3のトラップのビートとドゥーワップとブラスの組み合わせも思いの他新鮮で、気付けばいつの間にかすっかり気分は絆されている。

M4以降でもアルバムを通じて畝るサブベースと耳を刺激するハイハットは一定の存在感を維持しているが、特にM8のような曲はオーセンティックなサンプル・ベースのヒップホップ・ソウルのビートをトラップに差し替えただけという気がしなくもなく、後半はやや退屈で、正直冒頭の3曲以外は大して印象に残らない。

全体的にJay-Zの存在感は薄く、Beyoncé のヴォーカルが牽引する曲が大半で、M4等のJay-Zのラップの比重が高い曲に於いても寧ろBeyoncéのエキセントリックなフロウの方に自ずと耳が向かう。
Jay-Zのラップが明らかにKendrick Lamarを意識したような瞬間もあり、何とも胸糞が悪く、やはりM2のバウンシーでドスの効いたBeyoncéのナスティな歌唱の方に余程痺れる。