Stephen Malkmus And The Jicks / Sparkle Hard

M1やM6のトラッシーなギターがフィードバックを伴い爆発する瞬間や、何処となく「Shady Lane」を彷彿とさせるM9等が否応無くPavementを思い起こさせ、言いようのない嬉しさが込み上げてくる。
但し単純な原点回帰作でない事は明らかで、ピアノに始まりオルガンやシンセサイザーにストリングス等の多彩な器楽音はBeckプロデュースの2011年の「Mirror Traffic」を継承するようでもあり、特に優雅なストリングスが彩るM3には、同時期に同じくBeckが手掛けたThurston Mooreのソロに通じるような感覚もある。

加えてM7ではこれまで意外に無かったリニアなリズムのストレートなシューゲイズ風のナンバーが披露されており、M8後半のシューゲイズ・ミーツ・クラウトロック的な展開は初期Deerhunterのよう(最近そればかり言っている気がするが、如何に00年代以降のインディ・ロックにとってその存在が大きかったかという事だろう)。

Canとカントリーとロックンロールが混淆した結果Wilcoみたいになったといった趣きのM4や、ラストを飾るM11の二部構成の後半に於けるモータリックなリズム等からもクラウトロックの影響が垣間見え、シューゲイズとクラウトロックは間違いなく本作の二大リファレンス・ポイントだと言って良いだろう。

M9は今更何故かヴォコーダー、と言うかトークボックスが登場して可笑しさ誘うし、クレジットには無いが明らかにKim Gordonが歌うカントリー&ウエスタンのM10も如何にもStephen Malkmusらしい捻くれたセンスを感じさせる。
在り来たりな老成とも違えば、闇雲に若さに媚びる事もなく、キャリアのどの作品にも似ていない充分な新鮮さがあり、全てをフォロー出来ている訳ではないが、間違いなくソロになってから一番の充実作だろう。