The Internet / Hive Mind

グルーヴィでスムースな中にも何処か歪さを残すベース・ラインとファンキーでありながら洒脱なギター・カッティングが基軸を担っているが、生ドラムを中心としながらも、90’s後半のJ Dillaを思わせるクラッシンなスネア等の様々なエフェクトや、ドラムマシンからヴォイス・パーカッションに至るまでの多様な音色を駆使した創意工夫に富んだビートの効果によって、バンド形態にありがちな、どの曲も同じに聴こえるという事態が巧妙に回避されている。

アップリフティングなファンクに4/4のキックを組み合わせたM2、2・3拍目にアクセントを置いたM3やボサノヴァやサンバを応用したM4等、リズムは多様で、中音域でも時折Moonchildによるブラスが非常に効果的に配置されている。
特にベースもビートもスタティックで抑制された雰囲気の前半から一転、後半にブラスが合流しスピリチュアル・ジャズ宛らに展開するM7は白眉と言って良い。

Syd「Fin」にも通じるクールで官能的なムードがアルバムの大半を占めているが、フラメンコ風のギターがサウダージを漂わせるM5と、続くM6の鬱屈した感じからは、UA「Ametora」を思い出したりもして、エモーションはより幅広い。
どの曲も充分にフックがあるが故に、アルバム全体を俯瞰すると逆に強弱に乏しく、抑揚が無く感じられてしまうのは玉に瑕に言ったところ。

ヴォーカルへのエコー処理がアトモスフェリックな効果を生んでいるが、ドリーミーなM8を除いて、サウンドメイキングに於けるシンセサイザーへの依存度は低く、ビートにトラップ的な要素も一切無い。
このような作品と対峙する時、オルタナR&Bとは一体何だろうか、ネオソウル時代と何が一体違うのだろうかという疑問がいつも頭を擡げる。
少なくともThe Internetを評する際のそれには要するにインディR&Bと同義語以上の意味は無いだろう。