Jeff Tweedy / Warm

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アコースティック・ギターを基軸としてそこにドラムやベースが自己主張する事なく淡々と寄り添う。 
強いて挙げるとすればスライドギターの音が特徴的で、慎ましやかだが僅かに彩りを付け加えている。
スライドギターで思い出すのは坂本慎太郎「ナマで踊ろう」で、本作と同じように毒気が無いが、坂本慎太郎の場合は毒気が無いのが逆に猛烈な毒気になっていたのに対して、こちらは至って朗らかで諧謔は無い。

立体感のあるミキシングはWilcoと同様だが、構成も展開もWilcoより遥かにシンプル。
ハットとスネアに掛けられたエコーがクリック・ノイズのような効果を生んでいるM4、淡いエレクトロニクスや細やかな残響処理が仄かにけれども深遠なアンビエンスを生成するM6やM11等、音響面でJeff Tweedyらしさが垣間見えたりはするけれども、そのどれもが至って慎ましく、余程注意深く聴かない限りそれらのギミックが意識に上る事はない。

結局最もWilcoのJeff Tweedyを感じさせるのはディストーションの効いたベースがラウドに唸りをあげるM9だったりして、その他ではオルタナ・カントリーもしくフォークの「オルタナ」の部分は奥深く隠れて、表層には殆ど上ってこない。
終始緊張感が漲る事もなく、ラフでリラックスした雰囲気で、Wilcoには出来ない事を試行しようといった野心も感じられず、バンド活動の合間にミニマルな構成で録音したものをリリースしてみたといった感じだろうか。

その気軽さがまたソロの醍醐味ではあるだろうし、最終曲にGlenn Kotcheが参加している以外は、息子がドラムを叩いているのもまた微笑ましくもあるが、引っ掛かりに欠けるのも確かで、2018年はNine Inch Nailsと言いStephen Malkmusと言い、オルタナの矜恃を感じる作品が印象に残っただけに、若干物足りなさは否めない。