Vampire Weekend / Father Of The Bride

f:id:mr870k:20190811022330j:plain

 

ポリティカルなバンドが能天気な程に明るく驚く程高性能ポップに振り切れた。
M2の跳ねたピアノやパーカッション、M15やM16に於ける女声ヴォーカルとのデュエットは、有ろう事かディズニー映画の劇中歌に使われても良さそうで、商業的なプロフェッショナリズムを感じさせインディ臭さは微塵も無い。

M4等の何処かThe Policeっぽい曲調はBeck「Colors」と同質の感覚を惹起するし、M6は少しRivers Cuomoがポピュリズムに走ってからのWeezerを彷彿とさせる。
確かにアルバム全体もWeezerが外部のコンポーザーを迎えた「Hurley」に近い感覚があるかも知れない。
(勿論Vampire Weekendのアレンジの方がより入念で洗練されているしあれ程大味ではないが。)

特にアップリフティングな前半は毒気の全く無いポップだが、だからと言って意外と嫌悪感は無く、寧ろストレートでフックに富んだソングライティング自体はメディアから絶賛された前作よりも好きかも知れない。
解り易くこれ見よがしなエクスペリメンタリズムは皆無だが、随所に聴かれるオートチューン使いやストレンジなエフェクトは、決して単なるセルアウトではないというEzra Koenigの矜恃を聴くようでもある。

今一番エキサイティングな音楽の冒険はインディではなくポップ・フィールドにあり、インディに籠っている場合ではないのだというEzra Koenigの明快な意思表示が伝わってくるような作品で、それは勿論Dirty Projectorsと共振する現状認識であろう。
彼等の大胆なインディへの裏切りの媒介になったのがやはりSolangeとの交流なのだとしたら、10年代後半に於いて彼女の音楽的好奇心が齎したものは相当大きかったと言えるだろう。
尤もSolange本人は既に違う景色を見ているような気もするが。