Bill Callahan / Shepherd In A Sheepskin Vest

f:id:mr870k:20191123022225j:plain

冒頭、テープのヒスノイズ混じりのローファイな音像にLou BarlowのSentridohを思い出す。
勿論聴き進むに連れて余程ちゃんと(?)している事は解ってくるのだけど、ボトムが効いたジェントリーな歌声も何処か似ている。
微かに心地良く歪んだその魅力的な声はまたJim O’Rourkeにも通じるもので、呟きのようでありながら、色気と微かにオプティミスティックさを漂わせ、派手さは無いがクリアで丁寧なダブルベースの音色と共に低音域から作品を支えている。

そのJim O’Rourkeとのコネクションに加えて、90’s~00’sのオルタナ・カントリーという出自といった共通項からどうしたってJeff Tweedyの近作と比較してしまうが、本作を聴いて、今一つ「Warm」に没入出来なかったのはいつまでも若々しく若干甘ったるいJeff Tweedyの声のせいもあるかも知れないと思った。

アコースティック・ギターにスライド・ギター、ハーモニカ等のオルタナ・カントリー/フォークの標準的な音色を基調としているが、M4の思いも寄らないドラムマシンや淡いキーボードの音色は面白いし、M12のエレクトリック・ピアノやM13ではカリンバも効果的に使用されている。
演奏はラフだが、ローファイに寄り過ぎず、かと言って精緻過ぎもせず、フリーキーさと思慮深さの両方が良い塩梅のバランスを保っており、流動的で捻くれた曲展開も魅力になっている。

アルバムには統一感があり、裏返せば曲調も、レイドバックとブルージーを交互に繰り返すようなメロディも、それらが齎すエモーションの幅も狭く、20曲1時間超というボリュームに流石に中弛みするところもある。
最初は新鮮に感じられたものが反復する内に徐々に個性を消失していくようで、やや惜しい気もするが、新奇さを競うような音楽とは掛け離れた境地から発せられたものである事は良く解る。