Lana Del Rey / Norman Fucking Rockwell!

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サウンド的にはやはりCat Powerや最近のFeistに通じるインディ・ポップ/フォークで、サッドコアと聞いて想像する範囲内ではある。
M5のブレイクビーツは少しPortisheadみたいだし、長ければ即ち実験的という訳ではないものの、長尺のM3等からも少なくともラジオ向け(古いか)だけの曲を書いている訳ではない事は判るが、それも取り立てて大騒ぎする程のものとも思えない。
やはりその特異性は歌詞にあるのだろう。

過去作は未聴だが、サウンド面での洗練は何となく想像出来るし、本人がギャングスタ・スタイルだと称する露悪性で、一部の人に嫌悪されてきた(Kim Gordonには陳腐だと一蹴されたらしい)リリック面でも何かしらの成熟があるのかも知れない。
尤もあまり深追いする気にはなれないが、Pitchforkの年間ベストに選ばれる程の欧米での圧倒的な評価とそのような変化が無関係だとは思えない。

歌声はCat Powerに較べると未だ少し若々しく清廉な感じもあるものの、充分に倦怠感を有していると同時に思慮深さも漂わせ、この声でダーティ・ワードを歌われたり、フェミニズムに興味が無い等という発言が飛び出せば、リベラルなアメリカ人にはそれなりにショッキングだろう。
少なからず戦略的で充分にクレバーな人なのだろうと思うが、ヴォーカリストとしての魅力は寧ろ言葉を解さないからこそすんなりと浸れるものかも知れない。

現代アメリカ最高のソングライター等という賛辞は些か大袈裟な気がするが、ソングライティングの優秀性は確かで、アヴァンギャルドなバックグラウンドを感じさせる訳ではまるでないもの、The Carpentersを思わせるそれは2019年の作品で言えばWeyes Blood「Titanic Rising」と並べてみたい欲求にも駆られる。