M2の捏造されたレトロなグラムロック風は、同じくDanger MouseプロデュースのBeck「Modern Guilt」を彷彿とさせる。
乾いた生ドラムの音色や密室感のあるくぐもった音像はLittle Simz「Grey Area」にも通じるが、これはInfloの作家性によるものだろうか。
但しヒップホップの影響は皆無で、迷わずファンク/ソウルに括れそうなのはM1とM7くらい。
オルガンやソウルフルで荘厳な女声コーラス、耳を劈くざらついたファズギターといった要素は、寧ろThe DoorsやTrafficといった古いサイケデリック・ロックの名前を想起させる。
一方、よりアーシーな質感はあるものの、本人の弾くギターを基軸としたコンポジション、特にストリングスが荘厳でスピリチュアルなムードを齎すM5や、ハープをフィーチャーしたM9等はMoses Sumneyに通じる。
そう言えばM13のアコースティック・ギターのアルペジオや、フィルイン多目のドラミング等はRadioheadぽいと言えなくもないような。
一概にジャンルで括れないのはMoses Sumney、或いはKelsy Luと同様だが、モダンなR&B的な感覚は一切無い、と言うかモダンな要素自体が皆無と言って良く、ポスト・プロダクションで誤魔化されているが、寧ろクラシカルなロックに近い。
メロディ・センスやコンポジションに特別な何かがある訳でもない、と言うか寧ろThe Eaglesを思わせるようなM8やM9の哀愁漂うマイナー調は積極的に好みでないし、正直何処を面白がれば良いのか良く解らない。