Tame Impala / The Slow Rush

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ディスコ/ハウスからの影響は顕著で、アンセミックなピアノやシンセの音色が楽曲の基調となっており、辛うじてギターは聴こえるが決してロック・バンドのそれではない。
ドラムの音色はあからさまにエレクトリックという訳ではないが、クリシェをなぞったようなパーカッシヴでマシニックなビートはまるでGarageBandの自動生成のようだ。

サイケデリックにシンセ・ポップやディスコを混ぜた結果現出したのは、Neon Indian辺りのチルウェイヴを彷彿とさせるサウンドで、直近ではCaribouの新作に通じる感覚もある。
それも例えばMGMT「Little Dark Age」のように、2010年代以降、終わったかと思えば思い出したかのように繰り返されてきた類のサウンドで新鮮味はまるで無い。

チルウェイブをAnimal CollectiveBoards Of Canadaの影響を受けたベッドルーム・ミュージックとして捉えれば、Tame Impalaの元のイメージとの乖離は少ないし、バンド・サウンドからの脱却という点にしても、元よりKevin Parkerのソロ・プロジェクトなのだから不自然でも無く、例えばLiarsがAngus Andrew一人になってしまった「TFCF」のような、不慣れが故の異質さも歪さも全く無い。

裏を返せば売れっ子プロデューサーとしての手腕が遺憾無く発揮されているとも言え、徹頭徹尾破綻は無く、流石にどの曲もポップスとしての魅力は申し分無い。
ただそつがない分面白味に欠けるのも確かで、アルバム全体を俯瞰して見ると、却ってM7やM12のような、従来のTame Impalaのイメージに近いサイケデリックなギター・ロックの方が異質という意味でのフックになっているというのは、何とも本末転倒な話ではある。