King Krule / Man Alive!

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独特のコード感にストレンジなSEとダビーなエフェクト、或いは倦怠感が染み込んだような歌声等々、イディオマティックな特徴には枚挙に遑がないけれども、King Kruleのサウンドが持つ、鳴った瞬間に空間を支配するかのような強固にムードを醸出する力には、決してそれだけでは説明が付かないようなマジックが確かにある。

M1やM4のモータリックなビート、M2やM3のブーストが効いたベース等、本作の特に前半では幾分ポスト・パンク臭が増した印象がある。
メタリックなエレクトリック・ギターやサックスが入り混じった音色は少しThe Pop Groupを彷彿とさせる。
尤も鬼気迫る咆哮はKurt Cobainのようでもあるが。

M5以降のクリア・トーンで爪弾かれるギターやサックスの音色が齎すジャジーなムードは前作を踏襲するようで、前作と較べても全く遜色は無いがまた飛躍も感じない。
初めてKing Kruleの音楽に触れるのが本作であったならば迷う事無く称賛していただろうと思うが、期待が高過ぎただけにやや拍子抜けした感は無くはない。
前半のポスト・パンク路線で突っ走っていたとしたらまた印象は違ったのかも知れないとも思う。

本作の評価には全く関係が無いが、日本版の最後に収録曲の(本当に外で録音されたものなのかフィールド・レコーディングを重ねたのか判然としない環境音混じりの)アコースティック・ヴァージョンが、しかも4曲も収められているが、これが冗長さを助長している感は否めない。
素のソング・ライティングの良さが良く解る、とか何とかいった有りがちな狙いがあるのかも知れないが、そこにマジックの本質は無い気がするし、アルバム後半が不用意に水増しされた印象で、聴く気がだれるのでやめて欲しかった。