Burial / Tunes 2011-2019

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冒頭のゴシック・アンビエントから徐々にメランコリックな女声ヴォーカルと微かなビートが立ち上がり、ダウンテンポやトリップ・ホップを経て、M6のノスタルジックなエレポップ調 やM7のともすればややチージーな80’sポップス調を挟みつつ、M8の切迫感溢れるハードコアでアルバムは最初のピークを迎える。

M9は「Untrue」を思わせる2ステップ・ガラージだが、実は収録曲の中では最近の部類の当たる2019年のトラックである。
ディスクを跨いで、続く2012年作のD2-M1に於ける未だ「Untrue」を引き摺ったようにも感じられるゴーストリーな女声ヴォイス・サンプルとの連続性からは、ディスクが分かれているのが単に収録時間の都合以上の理由によるものではない事に加えて、気紛れで、ともすれば迷走気味に思える事もあった2010年代のBurialの活動が、幾つかの方向に引き裂かれながらも、実は確固した一貫性を保っていたという事が良く解る。

アルバムを通してチリノイズが通奏低音のような役割を担っており、事務的なディスク割りやタイトルとは裏腹に、シングルを並べただけとは俄かに信じ難いストーリーテリングを感じさせる。
ブレイクと言うよりも完全な中断が多く、途中でピッチさえ変わるトラック展開は決してフロア向きではなく、長尺のミックスと言うよりもサウンドトラックを聴いているかのようだ。

ディスク2では4/4のキックのテクノ/ハウスが主体なり、特にアンビエント・テクノ的なD2-M4とM5で個人的な2つ目のピークを迎える。
特段Burialが戦略的であったとは思わないが、同時期にダブステップを離れテクノに接近して行ったPinchやPeverlistと同調していた事を窺わせ、M6~M8はインダストリアルでこそないもののAndy Stottのダブ・テクノとの共振を再認識させたりもする。