Gil Scott-Heron / We're New Again A Reimagining By Makaya McCraven

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ヒップホップの影響著しいジャズ・ドラマーによるリコンストラクトだけあって、M3やM18等のループ感のある8ビートは確かにブーンバップ的だ。
M13でもテクニカルでマシニックなハイハットがリズムにアクセントを生み出しているが、Chris Dave以降ではヒップホップの影響を感じさせないジャズ・ドラマーの方が珍しいとも言え然程インパクトがある訳ではない。

Carlos Ninoともコネクションがある人らしく、確かにM1の幽玄なリバース・ディレイに始まって、ハープとヴィブラフォンとユニゾンスピリチュアル・ジャズ風のM2に繋がる流れはBuild An Ark直系と言って良い。
M5のパーカッシヴでポリリズミックなラテン・ジャズはKamasi Washingtonにも通じ、要するに2000年代以降の(それこそヒップホップを通過した)ジャズの潮流から大きく逸脱するものではまるでない。

オーセンティックな印象が強いとは言えKamasi Washingtonの場合とは違い、各楽器のソロ/アドリブが前面に出てくる場面は一切無く、あくまで演奏は主役であるGil Scott-Heronの歌唱/スポークン・ワードの背景に徹していて故人に対する深い敬意を感じさせる。
特にM11とM13に於けるシンプルだが叙情的なピアノのコード/リフレインと、Gil Scott-Heronの嗄れた含蓄に富む歌声が織り成すリリシズムが素晴らしい。

正直Gil Scott-Heronの威光を抜きしても残る特別な何かが強く感じられる作品とまでは言えず、Makaya McCraven個人の資質やオリジナリティが何処にあるのかは、本作を聴く限りでは良く判らない。
企画物故に仕方無い部分も多分にあるだろうと思うので、次は是非 Makaya McCraven本人のリーダー作を聴いてみたい。