Mark Lanegan / Straight Songs Of Sorrow

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ゴシックで呪術的なオルガンの響きに、全く関係無くキックは極小でスネアと言うよりもパルス音のような機能性が欠落したビートが重なり、これまた脈絡無くMark Laneganのブルージーな歌声が挿入されるM1。 
後半で漸く登場するディストーション・ギターが辛うじてグランジの残滓を感じさせ、結果として当然のように冗長ではあるが、90’sオルタナティヴの残党の生き残り方として一つの可能性を感じさせる。

些か強引かも知れないが少しThrobbing Gristleを感じさせる気もするし、あれ程スタイリッシュではないにしろ、方向性としてはKim Gordonのソロの幾つかの曲に通じるものもある。
よくKurt Cobainが生きていたら今どんな音楽をやっていただろうかと考える事があるが、それがEarthみたいなものでなければ、ひょっとするとこんな風だったかも知れないと思わされる。
(同時にFoo Fightersみたいな音楽だけは絶対無いだろうとも。)

その後はM1のシンセ/ダークウェイヴ路線(と言うのは少し無理あるか?)を継承したような曲と、当たり障りの無いフォーク/ロック半々という感じ。 
前者の延々と反復されるシーケンスやメロディは冗長で、アルバム単位でも退屈には違いないが確実にヒプノティックではある。
(後者に関しては語るべき事が見付からない。)

バリトンの歌声も相俟って特にM6等はDavid Bowie「Black Star」を想起させたりする。
Mark Laneganの年齢を考えると少し枯れるのが早過ぎに思えなくもないが、Queen Of The Stone AgeやUnkleで聴くその歌声よりも余程すんなりと聴きやすく、ロックな曲調に乗った途端に鬱陶しくなる自分の声の特性を良く解っている。