Jessy Lanza / All The Time

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Janet Jacksonを彷彿とさせる声は、Kelelaのクールネスを薄めて甘美さを加えて少しチャーミングにした感じとでも言ったら良いだろうか。
サウンド面でもエレクトロニクス主体で、リズムのフックが豊富なR&Bという面でKelelaと通じる部分が多いが、Kelelaのラグジュアリーでミステリアスなイメージに対してJessy Lanzaのそれはもっとカジュアルで、それはジャケットにも巧く表象されている。

ArcaやJam City、Bok Bokといった名だたるプロデューサーがトラックを手掛けた「Take Me Apart」に較べ、Jessy LanzaとJunior Boysのメンバーの共作によるビート・プロダクションはシンプルでスペースが多く、その分ちょっとした装飾音やベースラインが魅力的なフックになっている。
どのトラックもシンセ・ベースが基調を担っていて、YMOの影響下にあるというのも良く解る。

トラック単位ではどれも頗る格好良く、ビートを構成する音色も豊潤で、特にベース・ライン、ハイハット、ウッドブロック、カウベルや変調されたヴォーカル・チョップといったマテリアルが奔放且つ躁的に絡み合うM3のロボット・ファンク(聴きようによってはジューク/フットワーク)的スクエアなリズムのバウンシーなビートは白眉。 

あれ程アッパーではないし、適度に抑制が効いてチージーさを回避しているが、M2のガラージ風なんかはCharli XCXと真っ向勝負が出来そうなほどポップで、目指したというキャッチーさは申し分ないが、解り易さを重視した結果なのか、歌唱のメロディもムードも金太郎飴的と言うか、ややアイデア不足な感は否めず、上物や歌に意識を集中してしまうと若干退屈に感じるのも確か。
ジャンルは重要ではないにせよ、エレクトロニック・ミュージックとしては充分に魅力的だが、R&Bとして聴くには些か致命的にも思える。