Paul Weller / On Sunset

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Paul Wellerの新作を聴くのは「Stanley Road」以来25年振りの事で、その間どのようなキャリアの変遷があったかは全く知らないが、総じて「Wild Wood」の直線上にあるサウンドで、意外な程に当時のイメージとの乖離は少ない。
とは言え年相応に従来のブルー・アイド・ソウル的要素に加えて、フォークは想定内としても、M7のラグタイム風やFrank Sinatraの名前が浮かぶようなM10のオーケストラル・ポップまである。

正直余り期待していなかったにも拘わらず思いの外気に入ったのは、オプティミスティックなメロディに依るところが大きく、不躾な言い方ではあるがやはり年寄は大らかでリラックスしている程魅力的だと思う。
音楽性には大分乖離があるものの、受ける印象としてはKevin Ayersの「The Unfairground」やBonnie Prince Billyの近作に近い。

ただ単に老け込んだだけではなく、アーシーなソウル/ロックに加えて、アルバム全体にシンセやSE、エコー処理等のエレクトロニックな要素の存在感がある。
コズミック・ディスコ風のM11が最たる例だが、M9を始めとしてシンセ・シーケンス等のエレクトロニクスが、ストリングスやホーン、コーラスといった要素と同列に取り分け浮き立つ事もなく(普通はダサくなりそうなところだが)自然に溶け込んでいる。

効果的かどうかはともかくとして、少なくともそれらのエレクトロニクスは全く気にならないし、まるで若作りにも感じない。
あのDavid Bowieでさえ、穿った見方をすればエレクトロニックな要素を若作りの道具にしているように見えなくもなかった事を考えると、そのスタイリッシュさには驚くべきものがある。