Oneohtrix Point Never / Magic Oneohtrix Point Never

f:id:mr870k:20210222221004j:plain

Daniel Lopatinの原点回帰の触れ込みやラジオにインスパイアされたという前情報に違わず、ラジオのジングルを茶化したかのようなインタールードに挟まれた80’sポップス風のサウンドからは「歯医者の治療音とその場に流れるBGMのソフト・ロック」というOPN最初期のコンセプトが想起される。

インタールードや頻繁に現れる断片的なループ、ヴェイパーウェイヴ的なコラージュだけを聴く分には「Replica」のようだし、M2やM3は「R Plus Seven」や「Age Of」に収録されていてもおかしくはなく、Oneohtrix Point Neverの集大成と言ってみたい気分は確かに解る。
(但し「Returnal」のコズミッシェだけはここには無い。)

但しそれもM3でごく普通の16ビートが入るまでの話で、「Garden Of Delete」以降、ビートやDaniel Lopatin自身の歌を採り入れるようになったOPNだが、ここまで普通のポップス然としたものは初めてのように思える。
M5やM7なんて特に諧謔性たっぷりで、寧ろGames/Ford & Lopatinのそれに近い。
このある種のチープネスにはエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたThe Weekndの影響があるのかも知れない。

M8は最早邪気さえ殆ど感じられない80’sポップス/AORのようなサウンドで、本作のコンセプトに一番フィットしているように感じられる。
ゲート・リヴァーブの効いたビッグなドラム・サウンドは自分の幼少期のFMラジオの記憶にも通じるが、もしかして同世代であるDaniel Lopatinもそうだったりするのだろうか。