The Soft Pink Truth / Shall We Go On Sinning So That Grace May Increase?

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個人的に(ディープ・) ハウスがキーワードとなった2020年に、18年振りにThe Soft Pink Truthの新作を聴くというのは何とも因果な感じで、必然的にハウス・ミュージックとの距離感に先ず興味が向かったが、焚き火の破裂音のような微細なノイズや、GrouperやJulianna Barwickの如き(というのはちょっと言い過ぎだけど)ポリフォニーに、Tim Hecker張りのゴシックな残響音が被さるオープニングには、捻くれたハウス/ディスコを期待していただけに些か意外性もあった。

そこから立ち上がるエレガントなピアノやDani Sicilianoを思わせるアルトの女声、四つ打ちの金属音のビートによる物音ハウスは「Bodily Functions」までのHerbertを思わせる。
ビートが引いていくのと入れ替わりに波の音と共に始まるM1後半はテクノでない方のミニマル・ミュージックのようで、ヴィブラフォンやホーンが入るとぐっとジャズ的に変容し、やはりMatthew Herbertの作品に近い感覚を惹起する。

同時にカリンバやウィンドチャイムのような淡い高音の電子音がエスニックでトライバルなムードを醸出し、ピアノの音色も相俟って(たまたま最近久々に聴き返したからでしかないが)懐かしいMuseum Of Plateなんかを連想させ、更にそこに再度四つ打ちのキックが入ってくるとまるでChari Chariのようだ。

ハウス・ミュージックは引き続きこの名義の根幹として横たわっているものの、ディープ・ハウスを完全に茶化した2002年の初作からは随分遠く離れており、アンビエントミニマル・ミュージック的な要素はMatmosの新作だと思えば然程意外性は無いが、終始厳かなムードが横溢し、表面上は嘗ての諧謔性は聴き取れない。
Matmosでさえもシリアスにならざるを得ない時代という事か、はたまたやっぱり担がれているだけなのか。