Cloud Nothings / The Shadow I Remember

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冒頭ピアノの音色に、また似たようなアメリカン・インディ・ロックかと思ったが、紛れも無くSteve Albiniによる目の粗い乾き切ったギター・サウンドと、M1の後半で急に前のめりで進み始めるドラムに、懐かしく狂おしく泣きたくなるような感情が呼び覚まされる。
上昇するコード進行と疾走感、緩急、迸る激情、書いていて恥ずかしくて鳥肌が立ちそうだが、確かに自分のルーツの在処を思い出させる。
これこそが本来エモと呼ばれていたものだ。
エモラップは今すぐに鬱ラップに改称すべきである。

続くM2もCowpersやNumber Girlのような、90’s後半から00’s初頭のジャパニーズ・ポスト・ハードコアを想起させるし、加えてプレーンな女声ヴォーカルはFucked Upを、間奏部の加速するノイズ・ギターはSonic Youthを彷彿とさせる。
M3のポップ・パンクは宛らBuzzcocksみたいであると同時に、胃の奥から吐き出すような嗄れ声のシャウトはKurt Cobainを彷彿とさせる。

M4やM9の性急な感じや単音使いのギターはAt The Drive-Inを思わせ、特にM10とM11の切迫感溢れるメロディや、アンサンブルと言うよりも各々好き勝手に突進するようなツイン・ギターは「Relationship Of Command」のようだ。
M6では疾走感のあるメロディと何処か拙いコーラスが初期のR.E.M.を思い起こさせもする。

徹頭徹尾どの曲も何処かで聴いたことのあるようなものばかりでオリジナリティの欠片も無いが、代わりに最初から最後まで駄曲は一曲足りとて無い。
2021年の作品とは俄かに信じ難い程に旧態依然としているが、自分の愛したパンク・ミュージックの要素の殆ど全てが詰まっているようで否定し難い、と言うか寧ろ積極的に大好きだ。
退行的なのは間違いないが、自嘲しながら古い友人達に勧めたくなるようなアルバム。
大人ぶってWeezerの新作に関心している場合では全くなかった。