前作の「Party In The Dark」に続くような歌物のM4や「Siamese Dream」の 頃の Smashing PumpkinsようなM7は、良くもまぁ飽きもせずと関心する程にワンパターンと言えばそれまでだが、前作ではBloodthirsty Butchersを思わせるような轟音に比重が置かれていたのに対して、本作ではメタリックでクリーンなディストーション・ギターが基調になっている。
Dave Fridmannにしては妙にクリアな音像で、Zoomで遠隔プロデュースした事が影響しているのかも知れない。
プリズム的に乱反射するエコーの効いたシンセリフが幽玄なM3を筆頭に、シンセの存在感が前面に押し出されており、前作と較べてよりアンビエント感があると言うか、要するにシューゲイズ的と言える。
曲によって(特にM5なんかは)My Bloody ValentineというよりもCoaltar Of The Deepersみたいで決して嫌いじゃない。
マリンバの音色に先導されて淡々と始まり、ストリングスと共に壮絶に展開するM8は特に白眉だ。
M2冒頭のチープなドラムマシンによるビートはやや意外で、ついでにメロディが喜多郎みたいでニューエイジなんて言葉が頭を擡げたりもする。
M6のレトロなヴォコーダー使いはまるでAirみたいだし、M10の素朴なアルペジエイターはKraftwerkを想起させ、オールド・ファッションなエレクトロニクスの使用がコンセプトの一つではあるのかも知れない。
とは言え総じて何ら変哲も無いロック・サウンドの範疇ではあり、改めてこれが単にインストというだけでTortoiseなんかと並んでポスト・ロックの名の下に陳列されていた時代の素朴さに思い入る。
そのロック過ぎるという点こそが、当時の自分がMogwaiやGY!BEや、はたまたSigur Rosに肩入れ出来なかった理由であるが、全てがフラットになった現在だからこそそれなりに楽しんで聴ける作品ではある。