Serpentwithfeet / Deacon

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精巧なヴォーカル・レイヤーによるポリフォニックなコーラスはMoses Sumneyに通じる。
特にM5のインタールード等はゴスペル/クワイア的なホーリーなイメージを喚起させるし、M10に至っては一人でヴォーカル・グループを模しているかのようだ。
とは言えMoses Sumneyとは違って生楽器のチェンバーな要素は希薄で、シンセ主体のミニマルなプロダクションが醸出するドリーミーなアンビエンスやウェイトレスな浮遊感はSolangeを連想させる。

然程強調されている訳ではないにせよ、微細なノイズの存在等がBlood Orangeのイメージと被るところもあり、要するに如何にもなオルタナR&Bだとは言える。
少しMiguelを彷彿とさせる甘い声質は個人的に余り好みではないものの、リヴァービーな音像がユーフォリックなM2は、Boys II MenミーツAnimal Collective(というよりPanda Bearか)といった奇矯な連想をさせ面白い。

白眉は柔らかなアナログ風のシンセの音色がMount Kimbie「Mayor」を思わせるM11で、カリンバとパーカッションが織り成すポリリズミックなビートがChari Chari「Aurora」をも想起させるバレアリックな名曲。 
アルバム中でも群を抜いて突出しているこの1曲だけでも買った価値はある。

この曲のクレジットにはすっかり消えたと思っていたSamphaの名前があり、物憂げなギターの旋律とアトモスフェリックで印象的なシンセの音色が染みるM4でも良い仕事をしている。
Sbtrktとのコラボレーションと言い、Solangeのプロデュースと言い、どうもこの人は他人の作品での方が実力を発揮するようだ。
と言っても未だソロワークが1作しか無いのだからそのような評価は性急でフェアではないだろう、という事で次のソロ作品が俄然聴きたくなってきた。