Dinosaur Jr / Sweep It Into Space

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キャッチーなM1やM6は、Murphがポップでフレンドリーと評した前作を踏襲している。
(前作と同じくLou Barlow作の曲もきっちり2曲で、何か契約でも結んでいるのだろかと訝しんでしまう。)
M7のアコースティック・ギターディストーションのコンビネーションは初期の楽曲を思わせるし、M6はタイトルまで過去の楽曲の組み合わせのようで笑える。

本作最大のトピックは、共同プロデューサーとして Kurt Vileを迎えている事だろうが、全編に渡って過去のDinosaur Jrの何処かしらの時代のどれかしらのアルバムの曲を彷彿とさせる(という点自体がもうかれこれ10年以上も変わらない)。
兎にも角にも何処を見渡してもKurt Vileの存在が感じられるところは無い。

強いて挙げるならば、中盤のギター・ソロ以外を終始アコースティック・ギター主体で押し通したM4や、跳ねた感じのピアノが基調となっているM9には多少珍しさが無くもないが、それにしたってJ Mascisの最初のソロやThe Fog名義の1枚目を想起させる。
その驚異的なまでのワンパターンさにも関わらず、再結成バンドの多くがコンスタントに活動を続ける事すらままならず、続いたとしても大して評価される事が稀な中にあって、Dinosaur Jrだけがそれなりのポピュラリティを維持し続けられているのはマジックとしか言いようが無い。

楽曲のポップネスという点で言えば確かに粒揃いで、再結成以来(ひょっとすると「Green Mind」以降でも)最高の出来かも知れない。
Lou Barlow作の2曲も悪くはないが、本作に関して言えばJ Mascisのソングライティングに於けるポップ・センスが爆発している。
相変わらず関心するようなところは何も無いが、誰も嫌いになりようのないDinisaur Jrであるのは間違いない。