Benny The Butcher & Harry Fraud / The Plugs I Met 2

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ラップに歌うようなフロウは皆無で、今やすっかり主流になった凡百のポップ・ラッパーとは一線画す、硬派な声色とオフビート気味のフロウから正統派のヒップホッパーといった印象を受ける。
近年のラッパーでその佇まいが最も近いのはFreddie Gibbsだろうか。

トラックの方は変則的なハットがモダンさを滲ませる瞬間も無くはないが、そんなものはサンプリングの強固な存在感に較べれば実に些細でしかない。
ヴォーカルが入るのも厭わずに分かり易いフレーズをサンプリングしたM1は、No I.D.やKanye West直系という感じで、M2のコーラスはJ Dilla作のDe La Soul「Stakes Is High」を彷彿とさせ、端正なリリシズム漂うヴァースはPete Rockっぽくもある。

一方で和物サンプルをカット&ペーストして再構築したM3は、SamiyamやMadlibといったアンダーグラウンドのプロデューサーを連想させ、ブレイキングの多用やリヴァース・ディレイといった小技の多さも特徴的である。
M8のメランコリックなピアノ使いはDJ Shadow(と言うか「Building Steam With A Grain Of Salt」)みたいでもある。

現在進行形のヒップホップを聴いている感覚はまるで無く、90’sかせめて00’sにひっそりとリリースされていた良盤を発見したような錯覚に陥る。
進歩性こそ皆無だが、ラッパーもプロデューサーも古き良き時代のヒップホップへの愛着と忠誠心を共有している点には好感しかない。
やはり感覚的にはFreddie GibbsとThe Alchemistのコラボ作に近いかも知れない。