Marissa Nadler / The Path Of The Clouds

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Sacred Bonesからのリリースという先入観から、例えばGrouperみたいなエクスペリメンタルなフォークを期待していたが、蓋を開けると管弦楽器やハープによるオーケストラルなアレンジはあるものの、総合的には余りに普通のフォーク・ロックで拍子抜けした。
印象としてはSharon Van Ettenなんかに近いだろうか。

全編に渡りエレクトリック・ギターが存在感を放っており、ちょっとゴス入ったようなムードはSmashing Pumpkins「Adore」や「Machina」の特定の楽曲を想起させるが、それは即ち冗長という事に他ならない。
リリックには殺人をテーマにしたものもあるというから、その辺りにSacred Bonesとの親和性があるのかも知れないが、まぁ全く興味は唆られない。

確かにリヴァーブの残響やシンセやオルガンの持続音によるアンビエンス/ドローンが薄い膜のように楽曲を覆ってはいるが、特段そこに肝要があるとも思えず、作品の魅力の有無には何の影響も与えていない。
音響/音色の面で耳を驚かせるよう瞬間は皆無で、ドリーミーと言えば聞こえは良いが只管眠たい。

総じて若干水分多めのMarianne Faithfull「Negative Capability」といった連想をさせる、と言っても特段魅惑的な歌声の持主だとも思えない。
殊更悪いと思う訳でもないが、その他に取り立てて素晴らしいメロディ・メイカーだとかいった突出した何かがある訳でもなく、要するに何が良いのかさっぱり解らない。