Bonobo / Fragments

f:id:mr870k:20220225203347j:plain

スピリチュアル・ジャズ的な楽曲を多く含んでいた前作に較べてよりストレートなハウス/ダンス・トラックの存在感が強く、レーベルメイトでもあるBicepやDisclosureにも通じるような機能性がある。
M11のピッチを落としたドラムンベースみたいなビートやアナログ風のシンセの質感は、もしやFloating Pointsにでも影響されたのだろうかなんていう妄想をさせたりもする。

ダンス・トラックに共通する、ブレイク開け直後に上物が再登場する前のビートのドライヴ感は頗る格好良い。
幾分クリシェ的であるのは確かだが、ダンス・フロアを恋しくさせるという意味ではこのご時世だからこそ尚更魅力的にも感じられ、Bonoboと言えばダウン・テンポというパブリック・イメージが覆る感がある。

上物は管弦楽器やハープ等の生音主体で、シンセのアナログ風の質感に、カリンバブブゼラ(?) 等のトライバルな音色も健在で、この辺がDisclosure「Energy」との近親性の源泉になっているのかも知れない。
印象としては「Migration」の音色を、そのまま四つ打ちや2ステップのビートに落とし込んだ感じで大きな方向転換を感じさせるものではない。

「Migration」では豊潤なジャズ曲に較べてダンス・トラックがやや凡庸で足を引っ張っている感もあったが、同作に横溢していたロマンティシズムを継承しつつも、それらが1トラックの中に自然と統合されている。
タイトルや幻想的なジャケット等、前作を踏襲する部分は多いが、アルバムとしての凝集性という面での完成度に於いては本作に軍配が上がる。