The Weeknd / Dawn FM

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俄かには信じ難いが、OPN「Magic Oneohtrix Point Never」と本作には殆ど兄弟のような近親性を感じる。
勿論スタイルも性格も大分違うが、FMラジオというモチーフや、全編に渡り一貫した明け透けな80‘s趣味に於いて、同じ腹から産まれた作品であるのは確かなように思われる。
アルバムを通じて特徴的なゲート・リヴァーブっぽいドラムの鳴りが如何にも80‘sフレイヴァを醸し出していて、「Blinding Lights」の大ヒットに気を良くしたのは想像に難く無い。

M2は宛らScritti Polittiのようで、最早オルタナR&Bと言うより正真正銘のシンセ・ポップ。
ヴァースに於ける低音ヴォーカルはGary Numanを彷彿とさせ、ニュー・ロマンティクスなんてタームさえ連想させる。
シンセ・ギターがいなたいM4やM5はMichael Jacksonへのオマージュだとしか思えず、続いて配置されたM6のAOR風に乗せたQuincy Jonesの語りも示唆的。

M8やM10は80年代後半のFMラジオか、深夜の海外の煙草のCMで流れていたようなイージー・リスニングで、猛烈に幼少期の記憶がフラッシュバックする。
もしかしたらThe Weekndも同世代だろうかと思って調べてみたが、90年生まれの一回り下の世代なので、やはりDaniel Lopatinに唆されでもしたのだろうか。

アッパーなアルバム冒頭の数曲のシンセのレイヤーはそこだけ取り出して聴けばコズミッシェ、つまり「Returnal」のようで紛れも無くOPNのもの。
相変わらずThe Weekndの歌もソング・ライティングも大して好きにはなれないが、シンセサイザー音楽として聴く分には相当面白い。
ポップ・フィールドで唯々巫山戯たいDaniel Lopatinと、コンセプチュアル・アートがやりたいThe Weekndの利害一致というところだろうか。
この如何わしさにDaniel Lopatinが大喜びする姿が容易に想像出来るが、同世代としてはその気持ちも解らなくはない。