Animal Collective / Time Skiffs

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インディ・「ロック」かどうかはさて置き、これまでで最も器楽演奏がはっきりと認識出来る作品であるのは間違い無い。
メンバーが口を揃えて語るように、特にPanda Bearが叩くフィジカルで素朴とさえ言って良いドラムの音色が作品のトーンを決める上での肝になっている。
相変わらず音数は多いが、ドラムだけではなく全ての音に人の手の質感や温度が感じられる。

コロナ・パンデミックの影響で、プリプロダクション後のレコーディングの殆どがリモート作業で施されたようで、時間と空間を共有しない作業環境が余り作品を煮詰め過ぎない簡素な作りに繋がったものと想像する。
直接顔を合わせない事で却ってトラディショナルな意味でのバンド・サウンドが立ち現れるというのは何とも逆説的で皮肉であり興味深い。

明確な歌の存在感から、「Strawberry Jam」辺りに近いという感想があるのも解らなくはないが、例えば「Fireworks」の圧倒的な生命力や躍動感と較べると終始チルアウトした、平熱のサイケデリアとでもいうような印象で、「Merriweather Post Pavilion」のようにユーフォリアで溢れている訳でもなく、正直物足りなさは否めない。

大人になったオリジナル・メンバー全員が久々に揃って制作された本作からはその成熟が滲み出している、と言うと聞こえは良いが、初めて聴くAnimal Collectiveが本作だったとしたら、果たしてゼロ年代で最も肩入れしたバンドになっていたかどうか。
ArcaやFKA Twigsが不気味な突然変異体や人形からヒトに成るのは良いけれど、Animal Collectiveが動物から人間になるのは気に入らないという、解り易くプリミティヴを有り難がる自分の単純さには些か呆れるが。