Madlib / Sound Ancestors

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Madlibの作品の中でも確実に指折りのキャッチーさで、フリーキーさは減退し洗練が際立った印象がある。
その洗練は間違い無くKieran Hebdenにより齎されたもので、特にM4やM6(Young Marble Giants!)といった、これまでのMadlibには余り無かったストレートな女声ヴォーカル物でそのシナジー効果が存分に発揮されている。

とは言え何故Madlib程のプロデューサーが何故今更他人のプロデュースを求めなくてはいけないのか?
その理由は定かではないが、Freddie Gibbsとの「Bandana」に於けるトラップの導入が小気味良い驚きを与えたように、現在のMadlibが何らかの変化を求めるモードにある事は確実なように思われる。

本作のある種のらしくなさは、例えばDan The AutomatorAlec Empireといった人達に楽曲を丸投げしたThe Jon Spencer Blues Explosionの「Acme」や、St. Vincentの手を借りて異化効果を目指したSleater-Kinney「The Center Won't Hold」といった作品を思い起こさせる。
つまりはストロング・ポイントを封じてまでフレッシュネスを獲得した作品だと言う事が出来るだろう。

一方でMadlibMiles Davisを好きを反映したようなジャズ・ファンクのM10、M13のアフリカン・ジャズやM16のフラメンコ・ジャズ等、The Last Electro-Acoustic Space Jazz & Percussion Ensembleを思い出すトラックも多く、ジャズへの愛情がMadlibとKieran Hebdenを繋いだであろう事は想像に難くない。