Beach House / Once Twice Melody

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アコースティック・ギターアルペジオとストリングス、オーバーダブによるハーモニー等が一体となってラウンジ感を醸出するM1は猛烈にAirに酷似していて乗っけから驚かされる。
特にストリングスの導入はアルバム全体を通じてシネマティックなムードを齎す上で重要な役割を果たしているように感じられる。

続くM2はMy Bloody Valentineからディストーションを抜いたかのようで、良くNicoを引合に出されるVictoria Legrandの中性的な声質には、一人でKevin ShieldsとBilinda Butcherのデュエットを再現しているような質感があり、改めてこの特異な声がこのバンドの大きなストロング・ポイントの一つである事に気付かされる。

これまで同様にサイケデリックではあるが、憑き物の取れたかのように穏やかで牧歌的とも言えるユーフォリックなメロディが目立つのも本作の特徴で、脈打つシンセ・ベースが少しインダストリアル風でゴスっぽくもあるD2-M4等の例外も僅かにあるものの、前作に漂っていたある種の不穏さやミスティックさは希薄になっている。

2枚組で4つのパートに分かれているコンセプト・アルバムの形態を採っているが、少なくともサウンドの面での各パート毎の変化は乏しく流石に冗長な感は否めない。
それでも何となく頭から最後まで聴き通せてしまうのはソング・ライティング力の成せる技だろう。
もう少しコンパクトに纏っていればもう少し印象も違ったのではないかとは思うが、捨て曲が無いのも確かで、ついつい詰め込みたくなる作り手の気持ちも理解は出来る。