Sleaford Mods / Spare Ribs

一言で言うならばローファイなエレクトロ・パンク。
辛うじてメロディックな要素は無くもないし、もっと弛緩もしているが、そのチープなビートに何となくSuicideを連想してしまう。
或いは腹が弛んだDeath Grips、然もなくば町工場のCabaret Voltaireとか何とか。

ここにギターが入ればLe Tigreみたいだと思うトラックも多いが、Kathleen HannaのソウルフルなヴォーカルがあってこそのLe Tigreだし、管を巻く中年男性が代わりでは聴くに耐えない程いなたくなるであろう事は想像に難くなく、エレクトリック・ギターのコード・ストロークを用いないというその美学は信頼に値する。

年老いてからのJohn Lydonみたいな歌(?)声には、確かにこのグループの特異性が表象されているのだろう。
その言葉を吐き捨てるような歌唱スタイルや、余白だらけの簡素なトラックはやはりポスト・パンクとしか呼びようがない。
活動は2000年代の後半にまで遡るが、長らく何となく手を伸ばす気になれずにいたのが、今このタイミングで漸く向き合う事になったのは、UKに於ける新たな世代によるポスト・パンクの隆盛と無関係ではないだろう。

とは言え確かなテクニックや豊富な音楽的知識に裏打ちされた印象のある新世代とは異なり、8ビートを中心としたビートは平たく言っても単調で、M9では多少裏拍にハットが入ってダンサブルになるが、それにしたってGarageBandのプリセットみたいで決してそこに面白味がある音楽ではない。
やはり肝要はリリックにあるのだろうと思いつつ、今一つ歌詞カードを追い掛ける気分にはならない。