Kurt Vile / (Watch My Moves)

アコースティック・ギターを持ったポートレイトのジャケットのせいかも知れないが、巧みなフィンガー・ピッキングの印象が強かった「B'lieve I'm Goin Down...」に較べて、M1の牧歌的なピアノとホーンやM2のチープなドラム・マシンのビート、M3のリヴァース・ディレイにM4等で聴かれるアナログ風のシンセやテナー・サックスの音色等、楽器もエフェクトも多様になり聴き飽きない。

「B'lieve〜」をThurston Mooreだけならまだしも、Kim Gordonまでが気に入っているという話を知った際には些か意外に思ったものだったが、改めて聴くと成程Pavement、と言うかStephen Malkmusに相通ずるものが確かにある。
歌声はまたJ Mascis(彼もまたKurt Vileの強力なサポーターだ)、或いはLou Reedを彷彿とさせるし、反復を基調としたヒプノティックなコンポジションJim O’RourkeWilco辺りにも通じる感覚があったりと、連想される名前がSonic Youthと繋がる人達ばかりで、当然自分が嫌いな筈がない。

これらの(広い意味でのロック・ミュージックには違いないが)表面的には作り出す音楽のスタイルの全く異なる人々に共通するのは、何を採用しているかよりも寧ろ忌避するもの ー 例えば染みったれたメランコリーや汗臭いマッチョイズム ー に関するセンス、言い換えれば(嘗て松尾スズキ宮藤官九郎との共通点を評して語った)「恥の感覚」にあるように思える。
そして勿論それはKurt Vileにも継承されているように感じる。

と言いつつ、ユーモアは充分に感じさせるがしかし殊更にフリーキーだったりエキセントリックなところはまるで無く、(とんでもなくアイロニカルだったり退廃的だったり無気力な事を歌っている可能性はあるが)ある意味でストレートで実直そうな音楽性から一番近親性を感じるのはやはりCourtney Barnettで、飄々としたメロディ・センスにも通じ合う部分がある。
Kurt&Courtneyのコラボレーションは単なる洒落ではなかったという事か。