Sufjan Stevens And Angelo De Augustine / A Beginner's Mind

最近は他人とのコラボレーション活動が目立つSufjan Stevensだが、継父とのアルバムはアンビエント/ニュー・エイジだったと人伝に聞いていたし、本作は各曲毎に1つの映画(しかも有名な大衆映画ばかり)を題材とした作品という事で企画物を予想していたが、幾分カオティックだった「The Ascension」よりも余程Sufjan Stevensらしい作風で、目新しさは無いものの安心感はある。

コラボレーターであるAngelo De Augustineの事はまるで知らなかったが、Sufjan Stevens同様に弦楽器は勿論の事、鍵盤から管楽器までを熟すマルチ・インストゥルメンタリストのようで、ギターにバンジョー、ピアノは勿論、ヴィブラフォントロンボーンシンセサイザー等、決して器楽音自体に目新しさがある訳ではないものの、その多彩で豊潤な音色をたった二人で操っているという事には単純に感嘆させられる。

オズの魔法使い」なんかは如何にもSufjan Stevensらしいように思えるが、「マッドマックス」「遊星からの物体X」等という、凡そそのイメージに似つかわしくない映画も題材に挙がっており、当然ながら映画のプロットを音像化したような疑似サントラ的なものではまるでなく、曲そのものから直接そのタイトルを連想するのは難しい。

寧ろ映画そのものというよりも、視聴後のソングライター自身の感情の状態を表象したと言った方が正確なようで、あくまでも映画は触媒でしかなく、その良し悪しや好き嫌いは全く無関係なのだろう。
映画がどれほど詰まらなかろうとその退屈を歌にすれば良いというのは、まぁ単なる遊びではあろうが興味深いアプローチではある。
もっと言えば触媒が映画である必要ですらなく、日常のどんな事柄からでも歌を紡ぎ出せるというシンガー・ソングライターとしての矜持を感じさせる。