700 Bliss / Nothing To Declare

獰猛なサブベースとそれを囃し立てるかのようなパーカッシヴな要素、隙間だらけの構造上のシンプリシティといった特徴はグライムの一種に分類しても良さそうなものだが、重低音ばかりが強調されているという訳でもない。
忙しないハイハットはトラップのようとも言えるし(ちょっと無理があるか)、M3やM8のビートはジュークとブレイクコアのキマイラのようでもある。

何の変哲も無いミニマル・テクノにスポークン・ワードを載せただけのようにも思えるM4は宛らCabaret Voltaireのようだが、しかし音量のバランスに於いてビートとヴォイスの主従関係が逆転している点がユニークで、あくまで本作の主役はMoor Motherの声とそのメッセージにある事が宣言されているかのようだ。

要するにどのようなカテゴライズからも零れ落ちる猛烈な異物感があるが、全編を覆う脅迫的なムードや低周波のノイズの存在等からは強いて挙げるとすればやはりThe Bugが思い起こされる。
但し怒りや憂いといったネガティヴな感情のみを原動力とするようなKevin Martinのサウンドとは異なり、M7ではMoor MotherとDJ Haram2人によるものと思われるスキットがユーモアも感じさせる。

メロディと呼べる要素は殆ど無く、リズム・コンシャスなのに不思議な程身体が動かない。
ラップや単なるスポークン・ワードと言うよりも、恰も活動家のアジテーションか牧師の説教のような声の存在感にビートが飲み込まれてしまっている印象を受けるが、決してネガティヴな意味ではなく、その結果として絵も言われぬオルタナティヴ・ミュージックを現出させている。