Perfume Genius / Ugly Season

笙のような音色が雅楽のような音像を現出させるM1やM2はチェンバー・ポップを通り越してモダン・クラシカル、と言うかTim Hecker「Konoyo」に接近するかのようだ。
或いはフルートを中心に構成されたBjörk「Utopia」にも通じるようでもあるし、M5のピアノ曲坂本龍一を彷彿とさせなくもない。
元はコンテンポラリー・ダンス作品向けに作られた音楽だというが正にそんな感じ。

こういう曲調で聴くMichael Hadreasの声がAnohniに似ているのはちょっとした発見で、ついついジェンダー・イシューと結び付けてしまいそうにもなる。
確かに歌い方と性自認に関連性が全く無いとは思わないが、大して面白い話に発展するとも思えないのでとりあえず置いておこう。

クラシカル一辺倒という訳でもなく、同時にカリブ海ボリウッドの音楽の要素もまた本作を特徴付けている。
スティールパンを模したかのようシンセと幽玄なハープやタブラ風のパーカッションがユートピアめいたイメージを喚起させるM4にはRaveena「Asha’s Awakening」に通じる感覚もある。

M6のルーツ・ロック・レゲエやM7のアフロ・ビートの援用にはPerfume Genius版のエキゾティカ/ワールド・ミュージックといった趣きがあり、何時になくノイジーでパンキッシュなM9を除いてはインディ・ロック的な意匠から離れた分、その音楽的語彙の豊富さがこれまでよりも解り易く提示されていると言えなくはない。