Jockstrap / I Love You Jennifer B

冒頭ではSharon Van EttenかGirlpoolのようなフォーク・ロックとシンセ・ポップの間の子かと思わせておきながら、更にはEDMやハイパー・ポップ、チェンバー・ポップをも掛け合わせたような音楽で、エクレクティックを極めている。
或いはLana Del Reyのサッドコア(とはもう言わないか)とDat Politicsのトイトロニカの遭遇とでも言うか。
M3ではScritti Politti転じてMax Tundraまで連想させたりして、まぁとにかくスラップスティックなのは間違いない。

甘ったるいメロディと圧の強いノイジーなビート、極端なエフェクト類の組み合わせから、現出するサウンドのイメージが最も近いと思ったのはSleigh Bellsだったが、もっと知性や趣味の良さを滲ませているし、単純に音の強度も面白さもある。
M8のハープの音響等はArcaからそう遠くはないし、M9では「アルハンブラの思い出」みたいな曲調に全くフィットしないSEやエフェクトが地味に痛快。

インタビューで影響源にSkrillexの名前を挙げていたのは苦々しく思ったものの、チージーなアルペジエイターが炸裂するM5等を聴くと成る程という感じ。
まさかA. G. Cookが言っていたアコースティックEDMがこれなのか(多分違うけど)?
そして勿論俗の極みのようなアルペジエイターをアートの文脈に召喚する試みに先鞭を付けたOPN「Garden Of Delete」に通じる部分もある。

ヴォーカルはBlack Country, New Roadのメンバーでもあるが、この悪ふざけが過ぎる感じ、フリーキーであろうとする意思が横溢したような感覚はポスト・パンクと言うよりももっと90’sUSオルタナティヴに近い。
確かにあざとい音楽ではあるのは間違い無いが、若者はあざといくらいが丁度良い。