Pixies / Doggerel

Kim Dealが居ないPixiesに今一つ興味が湧かなかったのと、メディアからの評価が押し並べて低かったのとで、再結成以降のアルバムには一切手を出してこなかったが、久々の快作という事なのか、これが中々どうして悪くない。
流石に「Surfer Rosa」や「Doolittle」のポップネスには及ばないにしても、Black Francisの奇妙なメロディ・センスは健在で、「Trompe le Monde」の次に続けて聴いたとしても全く違和感は無い。

Black Francisのヴォーカルにもディストーション・ギターにも全盛期の鬼気迫るような凄味は無く、些か丸くなったという気はしなくもないが、決して老け込んだ感じはしない。
女性ベーシストによる直線的なプレイもバッキング・コーラスもKim Dealの不在を感じさせる事はなく、Kim Dealの役割をそっくりそのままなぞる事を強いられているようで、若干気の毒ではあるが、Peter, Paul And MaryミーツHüsker DüというPixies元来のコンセプトにとってそれは不可欠な要素であり、致し方無いという気もする。

Suedeの新譜では耳障りで仕方がなかった間の抜けたシンセ・ストリングスやマレットが、Pixiesの場合はM4の全く不自然なテルミンやM9の弛緩した口笛の音色等と同じく、逆にストレンジな魅力を補強する要素として機能しており、寧ろチャーミングにさえ感じられる。
まぁ間違いなく思い入れの違いによる依怙贔屓ではあるが。

全く変わり映えがしないと言えばその通りだが、輪をかけてワン・パターンな作品をコンスタントに発表し続ける再結成後のDinosaur Jrに較べて、Pixiesに対するメディアの評価が辛過ぎるようにも思え、些かアンフェアだという気もする。
片やオリジナル・メンバーが揃っているのに対して、Kim Dealというミッシング・ピースを受け入れられないという気持ちは解らないでもないが。