Panda Bear • Sonic Boom / Reset

パンデミックウクライナ侵攻も無かったかのような底抜けに楽天的な曲調や、スネア・ドラムを殆ど用いず、ハンド・クラップやギロ、スレイベルといった各種パーカッション類で構築されたグルーヴ感が希薄なビートは、「Person Pitch」「Tomboy」の頃のPanda Bearのソロ作品に近いアヴァン・フォークといった印象。

但し心無しか残響処理や微細なノイズは控え目で、代わりにSonic Boomによるダブ的とでも表現したくなるような大胆なマニュピレーションが施されている。
ダブと言えば、Sonic BoomプロデュースのPanda Bearの前作のタイトルはAugustus Pablo「King Tubbys Meets Rockers Uptown」オマージュであったが、ダブへの愛情が一回りも歳が離れた2人を分かち難く繋いでいるのではないだろうか。

Sonic Boomの手による効果音という表現がぴったりな即物的な電子音には、フェチには堪らない訴求力があり、それだけでも充分に聴き応えがある。
それらはエレクトロニカ、つまりグリッチやデジタル・シンセシス以前の時代の音を想起させるという意味で、何処かレトロでもあり、そう言えばM9には只管明るいKraftwerkといった趣きがある。

正直いつものPanda Bearのサイケデリック・アヴァン・フォークにSonic Boomのエレクトロニック・コラージュを単純に乗っけただけで、それ以上のものではない。
お互いの新たな魅力を引き出しているといった事もなく、1+1が2以上になっているとまでは言い難いが、元から充分に強力な1同士の足し算なのだから、贅沢な不満というものだろう。