Fucked Up / One Day

タイトルは僅か一日で録音された事に由来しているらしく、確かに前作では若干鼻に付く感じのあったポスト・プロダクションの影は薄れた。
ミックスも幾分ダイナミックでラフになった印象があり、手を加え過ぎて些か小綺麗に纏まり過ぎた感のあった前作に較べれば、勢いを取り戻したと言って良いのかも知れない。

と言っても実際に一日で行われたのはギターやベースといった一部の楽器演奏のレコーディングのみというのが実態のようで、M1でドラムに混じって聴こえるパルスのような電子音や、M2の大仰なストリングス・ワーク等の装飾/ポスト・プロダクションが全く無い訳ではないが、前作と同様に全く効果的ではなく蛇足だとしか思えない。

M9等でこのバンドのシグネチャであるスクリーモ・スタイルのヴォーカルが取り除かれた途端、Foo Fightersと大して変わらない音楽に成り下がると言うか、疾走感溢れるこの曲そのものは決して嫌いじゃないけれど、モダン・ハードコアと言うよりエモとかポップ・パンク等と呼ばれる類の音楽との差別化要素は見当たらず、今更面白がれる要素は何も無い。

Iggy Popの近作に対する高評価やYo La Tengoの原点回帰等、実例からもパンクないしはギター・ドリヴンなロック・ミュージックが再び脚光を集める機運自体は認めざるを得なさそうだし、それを不穏な世界/社会情勢と結び付けたくなる気持ちは解らないでもないが、個人的には単なるポップ・ミュージックのサイクル以上の意味を感じられないし、些かの興奮も覚える訳ではない。