Lana Del Rey / Did You Know That There's A Tunnel Under Ocean Blvd

讃美歌のようなオープニングは奇しくもBoygeniusとシンクロしており、宗教的なモチーフという意味では昨年辺りから色んな作品で頻繁に見受けられるゴスペル的意匠とも通じているように思える。
昨今のパンクの再興と併せて考えれば、実に在り来たりではあるが、戦争が祈りと怒りを誘発しているという推察は別に不自然ではないだろう。

M2やM3等は「Norman Fucking Rockwell!」から続くオーセンティックなフォークやアメリカーナ路線を踏襲しており、M12に参加しているFather John Misty辺りと共振するようでもある。
そのソング・ライティングには最早安定感すら漂うが、流石にそろそろ少し飽きてきた感が無くもない。

そんなこちらの反応を見透かすかのように、続くM4は中盤でサブベースが畝るトリップ・ホップ風に遷移する異色作で、前作の些か唐突なトラップのビートと同様にアルバムにアクセントを加えている。
M14ではトラップ風のビートも差し込まれ、愈々「Norman Fucking Rockwell!」以前の作風への揺り戻しが始まったと言えるのかも知れない。

Angelina Jolieの名前を繰り返すM15は嘗てなく軽快でちょっと能天気と言っても良いくらいで、明らかにLana Del Rey のモードが切り替わりつつあるのを確信させるという点で、過渡期的な作品だと位置付けて良いだろう。
M16は名曲「Venice Bitch」のトリップ・ホップ風のリメイクで、取って付けたような蛇足な感じがなくもないが、どんなプロダクションでも良い曲は良い。