Boygenius / The Record

現代のCrosby, Stills & Nashとは良く言ったもので、と前置きしておきながら、そんな事を言ってる人が他に居るのかどうかは知らないが、スーパーグループによる衒いの無いフォーク・ロックという点では正にそのような感じ。
特に讃美歌のようなM1の美しいハーモニーがその印象を助長している。

M2やM9等のJulien Bakerがメインで手掛けたと思しき楽曲は、Courtney Barnettを連想させるストレートなロックンロール、或いは捻くれていないThe Breedersと呼びたくなるような朴訥とした魅力を放っており、個人的にちょっとした発見であった。
バンジョーやブラスがややフリーク・フォーク的なM5を始めとして、女性版Sufjan Stevensといった感じのPhoebe Bridgers、Cat PowerFeistに通じるスローコア的なLucy Dacusと、しっかり三者三様の個性もある。

頗る地味でサウンドが特段面白いとは思わないし、諸手を挙げて大絶賛する気持ちには到底なれないが、各曲にそれなりの魅力はあり、単なるアウトテイクの寄せ集めでないのは確か。
リリックは結構アイロニカルな内容が多いみたいだし、そんなに単純ではないだろうとは思うが、サウンドだけを聴く分には真っ直ぐで、しかし丁寧に誠実に作られた感じは良く伝わってくる。

M6等は聴き手の精神状態や心の持ちようによってはストレート過ぎてややチージーにも感じられそうだが、確かに胸に迫るものはある。
そのピュアネスは眩し過ぎて思わず目を背けたくなるような後ろめたい気分にもなるが、決して揶揄したり陰口を叩く気にはなれない。