M1は相変わらずFrank Sinatraを連想させるようなオーケストラル・ポップだが、ヴァースは比較的シンプルなフォーク・ロック調で何処となくThe Bandを彷彿とさせる。
M3も冒頭こそThe Bandみたいだが、大仰なストリングスな入ってくるとBeckの「Paper Tiger」やその元ネタであるSerge Gainsbourg「Ballade De Melody Nelson」を思わせたりもする。
M2も意外なブルーズ・ロック風で、比較的ロック色が濃いアルバムだと言えるかも知れない。
ファンク風のAORとムード歌謡が混じったような、80’sジャパニーズ・シティ・ポップ(Shogunとか)みたいなM7はちょっと坂本慎太郎に通じるところもあったりして、大真面目なのかふざけているのか判らない、保守的なようでいて実は一筋縄ではいかない魅力は相変わらず。
タイトルはサンスクリット語で「大いなる火葬場」を意味するそうで、現在の世相を思えば根底にはシリアスなテーマがあるのかも知れない。
まるでMogwaiかMy Bloody Valentineのようなホワイト・ノイズ塗れのメロディアス&ディストーテッドなM5の壮大な抒情性から、強ち的外れな妄想でもないような気がしてくる。
しかし全体的なサウンドとしては前作と較べても一層大らかでオプティミスティックですらあり、本質的にはアイロニカルで捻くれた人なのだろう。
何処か戯画的な作家性や巧みなソングライティングの才能、その割にインディへの拘泥は一切感じさせずコラボレーターも選ばない(故に誤解を受け易そうな)ところは正に男性版のLana Del Reyといった感じ。