2012-01-01から1年間の記事一覧
「Merriweather Post Pavilion」以降に発表された二枚の関連作 ‐ Avey Tare「Down There」とPanda Bear「Tomboy」‐ に共通して抱いたのは、良くリヴァーブとかエコーとか飽きないな、という率直な印象だったが、本作を聴く限りどうやら遂に飽きたらしい。 残…
石橋英子を紹介するのに「シンガーソングライター」という言葉が用いられているのを何処かで目にした記憶があるが、SSWが字義通り「歌い手であり且つ歌を書く人」を意味するのであれば、その語程不適切な表現も無いと改めて思う。 勿論彼女のフラットな歌声…
ウォブリーな音像にモダンさはあるが、奇を衒うようなところは皆無で、ストイシズムやハードボイルドな美意識を感じさせるという面で、Flying Lotusが現代のJ DillaでHudson MohawkeがMadlibだとすれば、こちらは差し詰めDJ Krushといった印象で、つまるとこ…
アンビエント風のシンセにストリングスやピアノやギターが絡むM1と言い、ダブステップ調のビートのM2と言い、間違い無く本作がLiarsのディスコグラフィ上最もエレクトロニックな質感を持った作品であるのは確かで、彼等にとっての「Kid A」等と言ってみたく…
真っ赤なジャケットに映える「EBONY」の文字、タイトルは「Black Is Beautiful」…全く意味が解らない。 咳込む男声の不快なループから、一聴するとアンビエント風だが、微妙な不協和音にまるでチル出来ないシンセにフリージャズをサンプリングしたようなドラ…
自宅のスピーカーが貧弱な事を差し引いても、これ程ヘッドフォンを通して聴いた際の印象が変わる音楽は随分と久々で、展開はミニマルだし主旋律やリズムを追っているだけでは退屈極まりなく感じられたが、背後では目眩く複雑で豊潤なノイズの世界が繰り広げ…
Addison GrooveとはHeadhunterによるダブステップとジュークの接合をメインテーマに据えた名義であるとの理解をしていたが、本作の印象は意外にもシカゴのジュークが醸し出すプリミティヴィティやフリークネスからは掛け離れていた。アルバム前半ではSpank R…
Dean Blunt & Inga CopelandやActressを聴いて以降というもの、一部のダブステップのテクノ/ハウス回帰で個人的に高まっていたダンス熱は吹き飛ばされてしまった感があるが、打って変わってHot Chipの新作はヒプナゴジックもウィッチも全く関係無いとばかり…
ダメージ加工が施されたジャケットのイメージそのままに、本作には埃が降ってきそうなソウル・ミュージックから取られたレコード・ノイズ塗れのサンプリング・ループが横溢しているが、単なる古臭さ以上のフリークネスも強烈に漂っている。これぞMadlibとい…
仰々しさはCompany Flow時代から通じるEl-Pのトラックの特徴であるが、本作でのそれはこれまでのものとは些か様子が違っている。 特にM1のアッパーでロッキンなブレイクビーツなんかははどちらかと言えば鈍重な印象のあった以前のEl-Pのビートには無かったロ…
ポスト・ダブステップの文脈でその名前を聞く事の多かった印象のあるSlugabedのフルレングスには、確かにJokerなんかに通じるメロウネスもあるが、M2のバウンシーなベースや眩いまでのシンセの色彩はRustieを思わせるもので、全体的にはむしろヒップホップ由…
前作がリリースされた2009年、Tectonicは確かにダブステップの中心に居た。 Pinchは勿論、SkreamやBenga、Peverelist等のオリジネイター陣に、2562やMartynにJokerといった新興の勢力が顔を揃えたそのコンピレーションは、ダブステップとは何かという問いに…
宇川直宏のシンボリックなジャケット・デザインは「Super Are」以降のBoredomsの音楽と密接にリンクしていたが、それ以前の山塚アイによる、大竹伸朗の影響を感じさせる、独自の審美眼によって切り抜かれたモチーフを文脈等度外視して一見荒唐無稽に、けれど…
古く天井の高い教会で幾重にも反響するパイプオルガンの音を聴いているようなユーフォリックなイントロで始まる本作は、Deerhunterが二つの才能で成り立っている事を明らかにしている。 ベースラインこそやや単調な嫌いはあるが、クラウトロック的な反復にギ…
一部ではブロステップの先駆者(元凶?)として崇められているらしいRuskoだが、本人的にはその評価に不満もあるらしく、そこからの距離の取り方に興味を持って聴いてみたが、冒頭から在り来たりなピアノのリフと、ジャングルのリズムからウォブリーな重低音…
Mouse On MarsとModeselektorのMonkeytownとは、如何にも喰い合わせが悪そうに思えたが、実際にアルバムを聴いてみると、成程と腑に落ちるものもあった。 強調されたボトムに、明快で多彩なリズムとウォブリーな電子音は、モダンなベース・ミュージックと言…
M1のライムを聴けば、名門Impulse!からのリリースとなったDCPRGの復活作(と呼ぶのが妥当なのかは判らないが)がアメリカに向けられたものであるのは明白だが、そこで新たに導入された武器が日本語ラップだというのが、如何にも菊地成孔らしい倒錯を感じさせ…
Tom Jenkinson曰く「またエレクトロニック・ミュージックの事を考えて」制作されたという本作は、確かに自らSquarepusherをなぞるようなスラップ・ベースと高速ブレイクビーツで幕を開けるが、かと言って前作までのロック/ポップ路線を単純に捨て去ったもの…
ずっと気になり続けていたにも拘わらず機会を逸して聴き逃していた本作は、もっと早くに手を出していれば良かったと激しく後悔する程、非の打ち所の無い完璧なポップ・アルバムだったが、その良さを言葉にするのは何せ良くない所が無さ過ぎるのだから意外に…
このタイミングでLee Ranaldoがキャリア初となるソロ作品をリリースしたのには、Sonic Youthが本当に歩みを止めたのだという事を否が応でも実感させられるようで複雑な心境でもあるが、M1等は背景で薄ら聴こえるエレクトロニクスを無視すれば「Goo」辺りに収…
またもWileyが攻勢を強めている。 気分が乗った時のWileyは思い付くままにトラックを量産し、大した取捨選別も無くリリースする(ように見える)から付き合う方も大変だ。 僅か半年というスパンで届けられた本作は、勇ましいタイトルの割に前作に引き続きこ…
最早The Rootsの安定感は、現在のヒップホップはおろか、決して短くはないヒップホップの歴史に於いても他に比類出来るものの無い水準にあると言って良いだろう。 コンスタントに重ねられたリリースは本作で11作を数え、更にそれらの作品にはそれぞれに違っ…
Ariel Pinkを筆頭に80'sのAORの要素は今日のインディ・ロックに顕著なトレンドの一つだが、それは随分と以前からゆらゆら帝国の音楽の、例えばムード歌謡めいた空虚な女声コーラスや、サックスの音色等に散見出来たものでもある。 「空洞です」に於いて最後…
2011年に余りにも評判に良かった本作を聴いてみたいと思った契機はJames Blakeとのコラボレーションだったが、幾重にもレイヤーされたファルセットのヴォーカルと、シンセサイザーやスライド・ギターにホーンやストリングス等の要素がエコー/リヴァーブ処理…
ダブステップの拡散が齎した「ポスト・ダブステップ」を、今のところ最も象徴するのがJames BlakeとMount Kimbieであるという意見が然して個人的なものだとは思わないが、ダブステップの「次」という意味では、RuskoやSkream & Benga = Magnetic Manが種を撒…
Airを好んで聴く人の大多数にとって入り口となったのは、恐らく「Moon Safari」及び「Sexy Boy」なのだろうが、自分が初めてそのサウンドに惹かれたのは映画館の中での出来事だった。 Sofia Coppolaの「The Virgin Suicides」という映画が無ければ今こうして…
レーベルとの悶着のうわさはデマだったのか、晴れてデビュー作に続いてBig DadaよりリリースされたSpeech Debelleの2作目。 生音主体のトラック・メイキングという点では前作同様だが、前作のサウンドがUK版のフィリー・ソウルとでも言えそうなオーセンシテ…
やはり旬なシーンの変化とは目まぐるしいもので、前作から1年余りでリリースされたジューク/フットワークのコンピレーションの続編では、その後のシーンの多様な展開を確認する事が出来る。ミニマルと呼ぶのが憚られるくらいの単調さや、シンプル極まりない…
1. James Blake / James Blake2. Oneohtrix Point Never / Replica 3. Gang Gang Dance / Eye Contact4. Pinch & Shackleton / Pinch & Shackleton5. Rustie / Glass Swords6. Falty DL / You Stand Uncertain7. Mark McGuire / Get Lost8. Panda Bear / Tom…
本作から聴こえる強靭なサブベースやダブ処理はポスト・ダブステップの潮流の中で捨象されつつある要素だが、かつて頻りにダブステップから距離を置こうとしたShackletonと、逆にシーンへの帰属意識を隠す事無く強調していたPinchとが、2011年に於いてダブへ…