2015-01-01から1年間の記事一覧

Lightning Bolt / Fantasy Empire

Lightning Bolt初のスタジオ録音は、タイトル通りのM1は流石にジョークだとしても、音響が交通整理される事で技巧が表面化した結果、こんなにロック、と言うかメタルっぽかったかと意外な印象を受ける。 元より手数足数の多いドラミングは実はシングルらしい…

AFX / Orphaned Deejay Selek 2006-2008

Aphex Twin名義に較べ派手な展開は少なく上モノは簡素。 主旋律への拘りは希薄で、リズムに焦点を当てた習作の性格が色濃い。 背景は余白だらけで、大半のトラックが終盤に差し掛かって申し訳程度の上モノが被さってくる点で共通している。M4やM8の装飾の一…

Joker / The Mainframe

振り返ってみるとダブステップは、ハウス、テクノは言わずもがな、ジャズにアフロ・キューバンにIDM、そしてR&Bと、実に多くのジャンル/スタイルと接合した。 Gファンクをダブステップに持ち込み、James Blake等のR&B路線のポスト・ダブステップに先鞭を付…

Jamie XX / In Colour

インディ・ロックのリスナーにハウス・ミュージックを啓蒙するようなレコードであるという意味で、これは2015年の「Screamadelica」とでも呼べそうな作品である。 (現在の若者にそのような垣根があるのかどうかは知らないが。) レアグルーヴから取られたサ…

Kamasi Washington / The Epic

ファーガソン事件を受けた昨年末のD'Angeloの復活を契機に、Kendrick Lamar「To Pimp A Butterfly」にN.W.A.の伝記映画「Straight Outta Compton」の大ヒット、果てはDr. Dreの新作と、ブラック・パワーの再興を感じずにはいられないリリース/トピックが続…

Björk / Vulnicura

前作のアグレッシヴさが嘘のような歌とストリングスを基調としたフォーク・アルバムといった趣きで、全編を覆うメランコリーは「Vespertine」を彷彿とさせる。 ソング・オリエンテッドなM1などは正に同作収録の名曲「Unison」を思い起こさせるが、本作で扱わ…

Panda Bear / Panda Bear Meets The Grim Reaper

ハープにピアノ、ギター・カッティング等、僅かに器楽音はあるものの「Person Pitch」に於けるそれ程の存在感は無く、全編を通じてシンセのアンビエンスや電子ノイズ、ドラムマシンによる明瞭なビートが主軸となっている。エコー処理が控え目になると同時に…

Earl Sweatshirt / I Don't Like Shit, I Don't Go Outside

イントロを飾るレイドバックしたオルガンの音色にこそ意外性はあるものの、続く浮遊するリヴァービーなギターや沈鬱なピアノのループ、アトモスフェリックなシンセのアンビエンス等にはイメージ通りのダウナーなトリップ感が充満している。それは悪夢には違…

Death Grips / The Powers That B

只管Bjorkの声をサンプリングして切り刻んだDisk1は何故Bjorkをチョイスしたのか理解不能ではあるが、個人的にヒットとなった「The Money Store」よりも余程好みなのは、先ず以ってスカムで稚拙なラップがやや控え目である事に依るのかも知れない。唯でさえ…

Scuba / Claustrophobia

低周波がジリジリと放電する大仰なイントロに続いて展開されるのは、ダブステップのダの字も無い純然たるテクノで、UntoldやPearson Soundを聴いた耳には余りにも古臭い。 Berghainでのレジデントの経験が反映されているのであろうフロアライクで極めて機能…

Sleater-Kinney / No Cities To Love

一度歩みを止めたバンドがそのキャリアを再開するのには幾つかの理由が考えられるが、The Stone Rosesのような単純な金儲けは別にして、未完成で放置された仕事を完成させるのがMy Bloody Valentine「MBV」の目的だったとすれば、Sleeter-Kinneyの復活作は完…

Kendrick Lamar / To Pimp A Butterfly

Sly & The Family Stoneをもじった「Every Niggar Is A Star」に続くJames Brownの掛け声を合図に、George Clintonに導かれて放たれるThundercatのベースとFlying Lotusのビートで幕を開けるアルバムは、宛ら黒人音楽の歴史を総括するようである。全編を通じ…

Pearson Sound / Pearson Sound

ポスト・ダブステップ世代の寵児による遅過ぎたファースト・アルバムは、冗長に不自然な収縮を繰り返すシンセ音で始まる。 隙間だらけのストラクチャーは敢えて盛り上がりを忌避するようで、Untold程ではないにせよアンチポップで何かしらのモードを共有して…

10 Best Albums Of 2014

1. Copeland / Because I'm Worth It 2. Aphex Twin / Syro 3. Ariel Pink / Pom Pom 4. D'Angelo And The Vanguard / Black Messiah 5. Shintaro Sakamoto / Let's Dance Raw 6. Dean Blunt / Black Metal 7. Flying Lotus / You're Dead! 8. Matthewdavid …

Run The Jewels / Run The Jewels 2

エレクトリック・ギターの音色の鬱陶しさは相変わらず消えてはいないものの、2012年のEl-Pソロ「Cancer 4 Cure」の暑苦しいロック臭さはやや薄れて、Company Flowをハイファイにした「Fantastic Damage」に近い印象を受ける。ヒップホップにドローンや電子ノ…

Ariel Pink / Pom Pom

ラジオと言うより80'sのMTVをブラウン管のテレビのスピーカーで聴いているようなくぐもったローファイな音像、珍妙で古臭いSE、馬の嘶きに間抜けな掛け声やナンセンスなコーラス、唐突なテンポアップ&ダウン、成熟すら感じさせた「Mature Themes」から一変…

Scott Walker + Sunn O))) / Soused

Sunn O)))の名にまるで相応しからぬ高らかで大仰極まりないテノールと、煌びやかなシンセサイザーで幕を開けたかと思えば、すぐにディストーション地獄に突き落とされる。拷問をイメージさせる、鞭打つような音に地鳴りのような低音域の胎動、悲鳴のようなク…

D'Angelo And The Vanguard / Black Messiah

M1〜M3の過密なサウンドとロウなギターの音色の存在感や直線的なリズムからはJimi Hendrix等という連想が強ち的外れでなく思える程、ロック的な熱を帯びていて、嘗てヒップホップしか聴かないと豪語していたクールなR&Bシンガーの姿が一瞬霞み掛ける。フィル…

Freddie Gibbs & Madlib / Piñata

新進気鋭のギャングスタ・ラッパーのフロウは引き出しが豊富だが、Earl Sweatshirtなんかのラップと較べると何処か懐かしさを感じさせ微笑ましくもあり、ふと何故かBuddha Brandを思い浮かべたりもした。 Madlibから連想するMF DoomやGuilty Simpsonのドープ…

Untold / Black Light Spiral

iTunesにインポートしようとしたらジャンルに「Metal」と表示されたのには笑ったが、メタルの定義が最早何だか良く判らないのは置いておいたとしても、James Blakeよりは余程Sunn O)))と併せて聴く方が相応しいアルバムであるのは間違い無い。イントロを飾る…

Dean Blunt / Black Metal

Dean BluntのソロがHyperdubではなく、よりによってRough Tradeからリリースされたのは意外だったが、よもやこれほどHyperdubに相応しからぬサウンドが展開されていようとは。 極々有り触れたギター、ドラムにベースと然して巧くもない(どちらかと言うと下…

Dorian Concept / Joined Ends

色彩豊かで煌びやかなエレクトリック・ピアノやシンセサイザーの音が奏でるセンチメンタルな旋律には音楽に内在する演奏という行為を強く意識させるという点でMount Kimbie「Cold Spring Fault Less Youth」に近い感覚がある。鍵盤楽器を中心とした多様な音…

Flying Lotus / You're Dead!

「Cosmogramma」以降拡大し続けるジャズの要素は本作でいよいよアルバムを通低する核にまで発展した。 ビートメイカーとしての姿は限りなく後退し、ThundercatのスラップベースやAlice Coltrane譲りのハープ、ピアノといったこれまでのFlying Lotusのサウン…

FaltyDL / In The Wild

茫漠と霞んだ音像は正に宛ら荒野。 ポスト・ダブステップに於ける二つの極を例えばSbtrktとActressと仮定するならば、その中間に位置するように思われたDrew Lustmanの音楽性は作品を追う毎にどんどんと後者の方に接近していく感がある。前作ではその方向性…

The Bug / Angels & Devils

King Midas Soundを聴いた際に予感したトリップホップ・リヴァイヴァルは現実のものとなり、本作の前半はベース・ミュージックを通過したMassive AttackやTrickyのようであり、時折ディストピックなBoards Of Canadaのような瞬間もある。けれどもそれは「Ang…

Aphex Twin / Syro

再生ボタンを押したと同時に耳に飛び込むバウンシーなビートにアシッディなベースライン、奇怪に変調されたヴォーカルには、遂に「Windowlicker」の次が開けた感覚がある。全編を通じて背景を浮遊するシンセには確かに「Selected Ambient Works」を想起させ…

Copeland / Because I'm Worth It

微細に蠢くグリッチノイズに地鳴りのようなウォブルベースとコントロールを失ったサインウェイヴが重なったかと思えば、更には浮遊感のあるシンセに侵食されるM1は、間違いなく2014年最高の導入部の一つ。単調なビートに電子ノイズのループとレイジーな呟き…

Arca / Xen

不定形な展開に、ファットで隙間の多いビートや色彩豊かなシンセ等にはHudson MohawkeやRustieに近い感触があるが、彼等のサウンドとは異なりスラップスティックさは希薄で、憂いを帯びた金属音、或いは泣き咽ぶ怪獣の鳴き声のような電子ノイズには、隅々に…

Matthewdavid / In My World

チル&Bなんて言葉が生温く感じられるほどのこの酔いどれ振り。 埃を被ったソウルやR&Bのサンプルに、ヒップホップ由来の太いキックドラム、Matthewdavid本人による流暢なラップや巧みなヴォーカル、それらの音楽的な要素が過剰なエコーやリヴァーブによって…

Beck / Morning Phase

荘厳なストリングスや如何にもBeckらしいアコースティック・ギターのコード進行、ヴィブラフォン等の音色は正に「Sea Change」そのもので、6年振りの新作に相応しい刺激は一切無い。 ヴォーカルへのオーバーダブやエコー処理がやや強めで、使用される楽器の…