2018-01-01から1年間の記事一覧

The Internet / Hive Mind

グルーヴィでスムースな中にも何処か歪さを残すベース・ラインとファンキーでありながら洒脱なギター・カッティングが基軸を担っているが、生ドラムを中心としながらも、90’s後半のJ Dillaを思わせるクラッシンなスネア等の様々なエフェクトや、ドラムマシン…

Pusha T / Daytona

ソウルのサンプルを切り取った短いループに、ピッチ・アップされたヴォーカルや劇的なフック等は、如何にもKanye Westのトラックらしい。 声質もフロウも(時折喉を掻き鳴らす感じの発声は特に)酷似しており、Kanye Westが参加したM6はどちらのラップだか俄…

The Carters / Everything Is Love

「Lemonade」での妻による不貞の告発と「4:44」での夫の懺悔の次がCarter夫妻によるThe Carters、しかもタイトルが「Everything Is Love」とは、世界一のセレブ・カップルの茶番に付き合わされたような、恥ずかしいような、癪に触るような気分で流石に些か聴…

Dirty Projectors / Lamp Lit Prose

フィンガー・ピッキングが奏でるアコースティック・ギターの無国籍な旋律と対照的なファズ ギターの爆発や女声コーラスといったDirty Projectorsを象徴するイディオムの復活はアルバム・ジャケットと同様に「Bitte Orca」への回帰を強く印象付ける。 更には…

Stephen Malkmus And The Jicks / Sparkle Hard

M1やM6のトラッシーなギターがフィードバックを伴い爆発する瞬間や、何処となく「Shady Lane」を彷彿とさせるM9等が否応無くPavementを思い起こさせ、言いようのない嬉しさが込み上げてくる。 但し単純な原点回帰作でない事は明らかで、ピアノに始まりオルガ…

Gorillaz / The Now Now

ウッドブロックが刻むシンコペーションとシンセ・ストリングスがトロピカルなムードを醸出するM1に始まり、何処か微かに初期のBlurを感じさせるメロディを持ったニューウェーヴ調のM2等、Damon Albarn流のチルウェイヴ/シンセ・ポップと言えそうな作風で統…

Blood Orange / Negro Swan

ゴスペルからネオ・ソウルまでのオーセンティックな黒人音楽とシンセ・ポップの要素が入り混じった音楽性は、宛らD'AngeloとFrank Oceanの中間を行くようだ。 M14ではThundercatに通じるフュージョン、M15ではAriel Pinkを想起させるAOR風までが披露されてお…

Nine Inch Nails / Bad Witch

サイバーパンク的なM1こそ未だ嘗てのセルフ・ディストラクティヴなイメージから一変して、憑き物が取れたように至って普通のロックと化していくようだった「With Teeth」以降の感じを残している。 M2は時折破綻を隠さないローファイな生ドラムの8ビート(ク…

Oneohtrix Point Never / Age Of

正直チェンバー・ポップというジャンルには辟易していて今最も気分でなかっただけに、OPNの新作に多様な器楽音に歌までも導入されていると聞いた際には不安が過ったものだったが、またしても良い意味で予想は裏切られた。 冒頭を飾るチェンバロを始めとして…

Arctic Monkeys / Tranquility Base Hotel + Casino

グルーヴィなベースとドラムにピアノを中心として、オルガンやハープシコード、ヴィブラフォン等のチェンバーな器楽音で装飾を加えたコンポジションはGrizzly Bearに近い感覚だが、決して破綻がある訳ではないもののそこまで演奏がテクニカルだとは思えない…

Kamasi Washington / Heaven And Earth

オーケストレーションや男女混声のコーラスが齎す荘厳でスピリチュアルなムード等は基本的に「The Epic」を踏襲しているが、ビバップやヴォーカルもののソウル・ジャズは比較的減って、代わりにパーカッシヴでシャッフルしたリズムのアフロ・キューバンや、…

Grouper / Grid Of Points

一見フォーク・ミュージック的な意匠を纏っていても、歌やギターやピアノに起因する残響が一つに溶け合う瞬間にこそ力点が置かれていたという点で、Grouperの音楽はテン年代なアンビエント/ドローンの潮流の一部として受容されてきたのだと思うが、本作には…

DJ Koze / Knock Knock

Bonobo等にも通じる叙情性と、それを帳消しにするような珍妙でファニーなノイズやSEやヴォイス・サンプルが、装飾音と呼ぶには必要以上の音量で、と言っても機能性を完全に失わせるところまではいかない絶妙なバランスで融和していて、ロマンティックだけれ…

Beach House / 7

M1の男女混声のヴォーカルとビートボックス風に淡々と刻まれるドラムが聴こえた瞬間にフラッシュバックする「Loveless」の亡霊。 M2の低周波で唸り続けるノイズ然り、勝手にチルウェイヴのバンドだとばかり思っていただけに、そのシューゲイズ的意匠には新鮮…

Jon Hopkins / Singularity

倍音を多く含んだざらついた質感のアトモスフェリックで深淵な響きの上物と、ミニマル・テクノ風のイーヴン・キックのビートの組合せには、The Fieldのシューゲイズ・テクノに通じるものがある。 各トラックのスケールには統一感があり、特に裏拍にアクセン…

Kali Uchis / Isolation

M1のボサノヴァにM2のレゲエ、M6の気怠いダンスホールにM8のアンニュイなレゲトンと、自身の出自である南米・カリブ海のサウンドをふんだんに盛り込む一方で、M5のネオ・ソウル風からM7のブギーファンク、如何にもDamon AlbarnらしいM9のクラフトワーキッシ…

Janelle Monáe / Dirty Computer

Brian Wilsonのとても76歳とは思えないファルセットがコーラスを添えるM1が、まるでシーンが切り替わるように唐突にフェードアウトする様は、如何にもJanelle Monáeの新しい物語の幕開けに相応しいシネマティックなオープニングだ。 架空の映画のサントラ宜…

Courtney Barnett / Tell Me How You Really Feel

深淵なフィードバックによるドローンと淡々としたギターが徐々に熱を帯びるM1こそ、ややアーティで勿体付けたオープニングではあるが、その後に続く衒いの無いロックンロールの数々には思わず頬を緩めずにはいられない。 驚きこそまるで無いが、聴く度に益々…

Ryuichi Sakamoto / Async - Remodels

予想外に原曲のメロディを手付かずのまま残したM1は、Daniel Lopatinなりのリスペクトの顕れなのか手抜きなのか。 続いて同じ原曲の主旋律をそのまま使用したエレポップのM2のドラムは高橋幸宏のそれそのもので、完全なるYMOへのオマージュと言って良いだろ…

The Breeders / All Nerve

Steve Albiniの録音特有の飾り気の一切無いロウなサウンド、直線的で単調なベースとローファイなギターの隙間だらけの構造、メジャーともマイナーとも言い難いメロディとKim Dealのニュートラルな歌声、それらは紛れも無くThe Breeders以外の何者でもなく、…

Young Fathers / Cocoa Sugar

DiscogsもWikipediaもこのバンドをヒップホップにカテゴライズしているが、Death Gripsと同じくらいかそれ以上に猛烈に違和感がある。 M9等は辛うじてBig Dada辺りからのリリースならば未だおかしくないオルタナ・ヒップホップだが、それにしてもラップらし…

Wiley / Godfather

荘厳な女声コーラスやシンフォニックなストリングスに、銃声や爆破音といったSE等の音色は、宛らB級映画で描かれるチープなカタストロフか怪獣映画の劇中歌のよう。 派手で(言い方が悪いが)IQの低そうなハードコア路線が主体で、従来のエスキービートに較…

MGMT / Little Dark Age

冒頭を飾るのはまさかのシンセ・ポップ。 「Kids」だってそうじゃないかと言われれば確かにそうだが、シンセの音色はまるでYMOのようにレトロで、ユーフォリアを失ったマイナー調の「Time To Pretend」のようなM2等では、サイケデリアが後退した代わりにシン…

10 Best Albums Of 2017

1. Kelela / Take Me Apart 2. Mount Kimbie / Love What Survives 3. Tyler, The Creator / Scum Fuck Flower Boy 4. King Krule / The Ooz 5. Dirty Projectors / Dirty Projectors 6. Demdike Stare / Wonderland 7. Syd / Fin 8. SZA / Ctrl 9. Thunderc…

SZA / Ctrl

揺動を含んだシンセによる気怠いアンビエント・テイストにアコースティックな要素が入り混じった音像は、Solange「A Seat At The Table」に近いだろうか。 M3のビートは少し「The Love Movement」のJ Dillaっぽくもあり、M7のオーガニックなローズ・ピアノの…

Miguel / War & Leisure

David SitekやRaphael Saadiqの参加はSolange「A Seat At The Table」との共通点だが、確かにリヴァービーでややサイケデリックな音像は如何にも当世風のオルタナティヴR&Bといった趣きで、トラップの影響著しいM3やM11の唸るサブベースに、耳を劈く鋭利なス…

Syd / Fin

シンセ主体の上物や隙間の多いエレクトリックなビートには、Kelela「Take Me Apart」に於けるJam City等の仕事に通じる感覚がある。 M2のヴォーカル・チョップが効果的なビートや浮遊感のあるシンセ等からは、ベースこそ重くはないがJoker辺りのR&B色の濃い…

Tune-Yards / I Can Feel You Creep Into My Private Life

エレクトロニックな四つ打ちビートと大仰なストリングスに乗っけから戸惑いを禁じ得ない。 M7のドラムマシンによる8ビートに至っては少しオールドスクール・エレクトロみたいで、アルバム全体を通じてビートに当世風の要素は無く、そのチープネスはSt. Vince…

Bicep / Bicep

エコーの効いたアンセミックで何の変哲もないシンセリフを始めとして、上物、ベース、ビート、どの音色を取ってもプリセットのように月並みで、ノイズと呼べるようなエクスペリメンタルな要素は一切無いのが、却って耳に新鮮だったりもする。 構成は至極単純…

Kaitlyn Aurelia Smith / The Kid

M1のアンビエンスとその周囲で蠢く生き物のようなノイズの存在は、Panda Bearにも通じる電子音によるアミニズムとでも言うようなイメージを喚起させ、その点でニューエイジ云々と関連付けられるのも解らないではない。 ただ一方でM6のグリッチーなビートや、…