Kendrick Lamar / GNX

マフィア映画のサントラのようなオープニングこそJay-Zを連想させるが、チープなシンセが飛び交うM2と言い、ブリンブリンのシンセ・ベースが強列なM8と言い、直球のGファンク臭が充満している。
ストリングスやヴォーカル入りの楽曲も多く、これまでとは一風変わった粘着質のメロウネスでアルバム全体が覆われている。

車と共に写ったセルフ・ポートレイトのジャケットからして解り易く象徴的で、差し当たってはKendrick Lamarがギャングスタ・ラップ/ウェストコースト・ヒップホップに( Schoolboy Qのようなメタフィジカルな形ではなく)真正面から取り組んだアルバムだと考えて間違いないように思える。
また珍しく他のラッパーを多数フィーチャーしており、それが殆ど無名の地元の若手のフックアップである事から、LAをレペゼンするアルバムと考えても良いかも知れない。

全体的にメロウな中でも、M10だけは何処か少し雰囲気が異なりネオ・ソウル的な洗練を感じさせる。
個人的にはEPMD「So Wat Cha Sayin’」で認識しているアイコニックなギター・カッティングはThe NeptunesChad Hugoがプロデュースした90’sのニューヨークの女性ヴォーカル・グループSWVの楽曲からサンプリングされており、更に元ネタを辿ると70’sのニューヨークのファンク・バンドB.T. Expressに行き当たる。
ここで挙げた名前が全て東海岸の出身である事を鑑みると、他の楽曲とは少し成り立ちが違うのかも知れない。

何にしても若干コンセプトがとっ散らかっていた「Mr. Morale & The Big Steppers」よりも簡潔で、ラップ・スキルも言わずもがなではあるが、これがKendrick Lamarの作品ではなかったとして現在のように評価されたかは甚だ疑問が残る。
正直リリックの事は良く判らないが、サウンド面でKendrick Lamarが冒険的だったと言えるのはアルバムとしては実は「Pimp To A Butterfly」だけなのではないかという気さえしてくる。