2010-01-01から1年間の記事一覧
Michael Stipeは過去に自らの声について、「誰をも感傷的にさせる事が出来る」が故に「安易な歌を歌ってはならない」のだというような内容の事を語ったらしい。 何とも彼らしい若干ヒロイックな発言だが、それは同時に声という楽器の持つ喚起力や感情への訴…
こういう作品に触れるとDavid Lynchの「The Straight Story」という映画を思い出す。 鬼才による毒気の無い物語や音楽には、いつも得も言われぬ違和感を覚え、逆説的な悪意の表現ではないかと邪推する事で何とか自分を安心させたい気分に駆られる。メロウなR…
ポップ・ミュージックに関する書物の中でも、伝記物、取分け特定のアーティストやバンドについての自伝的な内容のものよりも、あるシーンやレーベルを取り扱ったものに面白さを感じる事が多い。 主題に関わった人物が多岐に渡る程、結果として立ち現れる物語…
音楽における「エディット」という言葉を自分は殆どカットアップと同義語のように使っていて、背景にあるテープ・エディットの存在や、それが80年代のある時期にディスコやヒップホップ・カルチャーに残した濃密な痕跡についてはこれまで全く知る由も無かっ…
有りがちなウォンキー・サウンドではあるが、単なるHudson Mohawkeのエピゴーネンとして片付けてしまうのは気が引けるくらいに良く出来た作品だ。まるでエレクトロニカのように精緻なプロダクションや立体的なミキシングは確かに非凡なスキルとセンスを感じ…
Animal Collectiveの中では逸早くソロワークで名を馳せたPanda Bearの存在感が突出している感があるが、昨年のフジロックで観たライヴでは負けず劣らずAvey Tareの役割の大きさが印象に残った。Avey Tare初めてのソロ作品は改めてバンドにおいて彼の果たす仕…
久々に実にアメリカらしい音楽を聴いた感じがする。 こういった悪ふざけ染みたポップ・ミュージックは、何故かイギリスからはなかなか出て来ない。 音楽性は全く別々だが、Butthole SurfersやPixies、Pavementのサウンドや、Harmony Korineの映画、そして本…
冒頭のTB-303のアシッドな響きがBuffalo Daughterの軽やかな原点回帰を告げている。 その原点とはシュガー吉永の「『Acid Trax』に影響を受けたロック・バンド」という言葉に集約されているだろう。 けれども如何にTB-303やヴォコーダーが多用されていようと…
DJ Food & DK自分が初めて購入したNinja TuneのレコードはDJ Foodのアルバムだったし DKと組んだSolid Steelシリーズは最も好きなミックスCDの一つでもある。 その存在を知った時には既にColdcutの変名ではなくStrictly KevとPCのコンビだったが 自分にとっ…
改めてMoochyの作るトラックを聴いていると、その特徴である要素、例えば地を這うようなベースラインだったりダブ処理の多用だったりの多くは、ダブステップと共通する点でもあり、トラックによっては日本産ダブステップの一角と捉えられても無理は無い気が…
Animal Collective以降のアメリカのインディロックはこの一年くらいの内に一気にシットゲイズやグローファイ、チルウェイヴなどのサブジャンルにカテゴライズされたが、Deerhunterというバンドはそれら新しいサウンドの象徴のように扱われている印象がある。…
かつてのThe Dylan Groupには、Tortoiseに次ぐポストロックの象徴的存在というイメージを持っていたし、その中心人物だったAdam Pierceの事はJohn McEntireやJim O'Rourkeと並ぶイノベーターとして認識していたが、久々に聴くMice Paradeの音源にそのイメー…
µ-Ziqのっけからの「Brace Yourself Jason」には流石に興奮した。 その後も「Lunatic Harness」辺り中心のセットリストで 古いファンには嬉しい限りだったが 淡々とそれらのトラックを繋ぐだけの内容で新鮮味は全く無かったと言って良い。 それでも大音量で…
Tommy Guerreroという人は自分にとって、Money Markと並んで今は亡きMo' Waxのラウンジ面を象徴するアーティストであるが、当時James Lavelleが彼らを重宝した理由は良く解る気がする。 Tommy GuerreroとMoney Markの音楽性に共通して言えるのは特定の音楽ジ…
噂ではこれで最後になるというSlum Villageのアルバム。 ジャケットに記されたJ Dillaの名前が確かにそんな覚悟を感じさせもする。 ただDe La SoulやA Tribe Called QuestのPhifeに、QuestloveやDweleといったSoulquarians周辺、そしてJ Dillaの実弟であるIl…
The Qemistsの音楽を初めて耳にしたのは、DJ Food & DKのミックスCDに収められたRoots Manuvaのリミックスで、DJ ZincとPendulumに挟まれたそのロッキンなトラックには何故かキャッチーで癖になる存在感があり、Cut Chemistのトラックと並んでそのミックスの…
Luminous Orange竹内里恵は終始ステージ左奥でまるで存在感を消したがっているようにひっそりと佇んでいた。 そう言えばシューゲイザーに共通する極端にか細いヴォーカルは、自我の消失への欲求の表れであるようにも思われ、何か象徴的なものを感じたりもし…
リードトラックである「XXXO」のPVを観た際には些か唖然とした。 自分にとってM.I.A.の魅力とはDiploやSwitchによるプロダクションも然ることながら、先ず1stアルバム冒頭の「Banana」のようにレイジーで拍子抜けするような、歌ともラップとも付かないヴォー…
この作品の持つシンプリシティはPhewとのジョイントアルバムや羅針盤の1stを想起させる。 初めて「らご」を聴いた際は、その余りに真っ当なポップスと、あのBoredomsのギタリストというイメージとが噛み合わず、ある種の悪意やユーモアの表象なのではないか…
A Tribe Called Questこの1年強の間にPublic Enemy、De La Soulと立て続けに ヒップホップのレジェンド達のライヴを観る事が出来たが 「It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back」や 「3 Feet High And Rising」に較べて 「The Low End Theory」や「M…
このアルバムにおける変化は余りにドラスティックだ。 明確な構造や展開、そしてリズム(Markus Popp自身よるドラミングは本作における最大のトピック)といった要素はどれも以前のOvalのサウンドには皆無だったものであると同時に、それらは殆ど「音楽」と…
Smashing Pumpkins 久々に観るBilly Corganは、とても穏やかでリラックスしているようだった。 スキンヘッドは相変わらずだったが、ゴスから一転してラフな格好で、ぎこちないながらもオーディエンスとのコミュニケーションを楽しんでいるようにも見えた。宛…
La Rouxのリミックスのスマッシュヒットを考えれば、Skreamの新作がポップに振り切れた事もごく自然な成行きかも知れない。 Ruskoの俗っぽさはある種のハイプだと捉えていたが、正真正銘シーンのオリジネイターであるSkreamにここまでやられると、ダブステッ…
前作のストレートなブルー・アイド・ソウルは随分愛聴したが、Jamie Lidellのテクノ・アーティストとしてのキャリアやWarp Recordsの先鋭的なイメージからの乖離が齎す意外性がその理由の一部だった事は確かで、それが永続的なシフトチェンジでない事もある…
最近室内楽的要素を感じさせる作品に触れる機会が多くなった気がする。 昨年のDirty ProjectorsやTyondai Braxtonのアルバムから始まり、最近のThe Rootsの新作にもその様な雰囲気があって、「チェンバー」という言葉がポップ・ミュージックにおけるある種の…
Dirty Projectors 本当ならば今年のフジロックのハイライトとなるべきステージだったが 朝から注入し過ぎたアルコールのせいで殆ど何も覚えていない…。 僅かな記憶を頼りに言葉を捻り出してみても 演奏能力や歌唱力の高さといった至極真っ当な印象しか思い浮…
The Rootsの通算9作目。 気付けば?uestloveが敬愛するDe La SoulやGang Starrを凌ぐリリースを重ねてきた訳だ。 特にヒップホップおいてグループはとにかく長続きしない。 辛うじて存続出来たとしても、コンスタントに作品を作り続けられるグループは実に稀…
ディスコパンクという呼称には以前から違和感があって、LCD Soundsystemの新作を聴いてその感覚は助長された。ディスコは解るとしてもパンクはどちらかと言えば隙間を嫌う音楽で、LCD Soundsystemの隙間だらけのサウンドとは真逆だと言って良い。 ファンク若…
Rusko 2008年のフジロック最終日、タイムテーブルにPinchの名前を見付け 興奮気味にクリスタルパレスに向かったところ 「大阪から来ましたDJピンチでーす」と陽気な日本人が現れて スカだかレゲエだかを回し始めた、という苦い記憶がある。 (その前がSheena …
かつてこのグループがMouse On Marsと共に クラウトロック・リバイバルとして括られた際には 今一つその意図が理解出来なかったが この新作は正にドイツのポップ・ミュージックの 素晴らしい伝統に即した音楽だという印象を受けた。 以前のイメージに近いア…