2014-01-01から1年間の記事一覧

M.I.A. / Matangi

先ずは何よりM.I.A.の拍子抜けするような気の抜けた脱臼ラップが復活しているのが良い。 冒頭のビートと装飾音のみで構成されたような、ヴォーカルを除いてメロディの要素が一切無いトラックからは、改めてアクティヴィストやデザイナー、レーベル・オーナー…

Actress / Ghettoville

アルバム冒頭では、「R.I.P.」に辛うじて感じられたハウシーなフィーリングは雲散霧消し、退屈極まりないループを基調とした、Dean Blunt & Inga Copelandにも通じる荒涼としたヴィジョンが拡がっている。 中盤に差し掛かる頃には徐々にポップネスが回復して…

Kanye West / Yeezus

冒頭数曲のエレクトリックでディストーテッドな音像ややたらと芝居がかったヴォーカルは、冗談抜きでNine Inch Nailsでも聴いているかのようで、センスが好きかどうかは置いておいても、確かに今大型フェスのヘッドライナーが一番似合うのはKanye Westかも知…

Liars / Mess

前作に引き続きエレクトロニクス主体のサウンドには、「Wixiw」で多少感じられた不馴れさ故の歪さが見事に無くなり、流暢なエレクトロニック・ダンス・ロックが全編に渡り展開されている。 エレクトロニック・サウンドは血肉化し、面妖でいなたいヴォーカル…

Omar Souleyman / Wenu Wenu

ヴォーカルと交互にリードを取るアラブ音階の狂騒的なシンセの独奏がとにかくユニークで 流動的なフレーズからこの音楽の出自が即興にある事を窺わせるが クワイトにも通じるリズムには人が言うほどの特異性は感じない。 想像よりも突飛な音楽ではなく聴き易…

Laurel Halo / Chance Of Rain

一聴する限りではそれこそ90'sの再生産を思わせるような極めて機能的なテクノのようにも聴こえるが、ヘッドフォンを通せばそこ彼処に聴覚を撹乱する仕掛が仕込まれている事が解る。 サーフィス・ノイズと狂ったエレクトリック・ピアノによるイントロに続くM2…

DJ Rashad / Double Cup

音楽未満のプリミティヴィティこそがジュークの魅力なのだとしても、このアルバムの完成度や洗練には否定し難い訴求力がある。 ジャジーでソウルフルなサンプルが齎すメロウネスにはより広範なポピュラリティに対する野心が漲っていて、最早部分的にはジュー…

Machinedrum / Vapor City

アルバムはPoleやKit Clayton等のエレクトロニカ時代のミニマル・ダブを思わせるアトモスフェリックでダビーなシンセで幕を開け、時流に乗ってジャングルを基調に、ラガマフィンや自らの出自であるグリッチホップ、或いはジュークの特徴的なタム使いやダブス…

Oneohtrix Point Never / R Plus Seven

本作で「歯医者の治療音とその場に流れるBGM」というOneohtrix Point Neverのコンセプトは完成を見たと言って良いだろう。 「Returnal」のアンビエンスの叙情と「Replica」に於ける微細で断片的なサンプリング・ループの諧謔はここで完璧な融合を見せている…

Factory Floor / Factory Floor

何処を切っても反復、反復、反復、リズム、リズム、リズム…。 メロディ的な要素は皆無、いや複数の音階を持つ音が連続している時点で更には大体歌(?)さえ含まれているのだからメロディが無い筈はないのだが、特定の感情を喚起するような意味でのメロディ…

Vampire Weekend / Modern Vampires Of The City

ブレイクビーツ風のマシニックなビートや声の変調、フィールド・レコーディングによるマテリアルやサンプリングの挿入などからはバンドが持つ引き出しの多さを感じさせるが、敢えてギミックは最小限に排され、オーセンティックなソングライティングとシンプ…

Swindle / Long Live The Jazz

ジャズとダブステップのクロスオーバーというアイデア自体は気恥ずかしいほど単純極まりないが、M1のウッドベースが聴こえた瞬間に身体中の血が沸騰するような感覚を覚え、これはダブステップ版の「The Low End Theory」かも知れないという期待感が充満する…

Julia Holter / Loud City Song

迸る楽理的なインテリジェンスと相反する宅録特有のシンセやドラムマシンのビートが有するチープネスは限りなく希薄になり、より重厚さを増した管弦楽器や生ドラムの音色によって最早チェンバーと言うより豪奢なオーケストラル・ポップと呼ぶに相応しい楽曲…

The Flaming Lips / The Terror

2000年代のアメリカン・インディに於けるサイケデリアの繚乱の始まりを告げたのが「Race For The Prize」の銅鑼の音で、その終止符が前作「Embryonic」だったとするならば、宛ら本作は在りし日のユーフォリアに対するレクイエムのようだ。前作と同様に耳を劈…

Deerhunter / Monomania

「Halcyon Digest」、Atlas Sound「Parallax」と続いたBradford Coxのソフィスティケート志向から一転して 本作ではDeerhunterのキャリアに於いて最もオーセンティックなロックンロールが展開されている。ノイジーで目の粗いローファイな音像はPavementやSeb…

Boards Of Canada / Tomorrow's Harvest

これまでの作品にもノスタルジアの裏側に底知れぬ怖さが確かに存在したが、ドローン的な低音やマイナー調の旋律がこれまでに無かったディストピックで荒涼としたヴィジョンを喚起させる。 くぐもったシンセ音に特徴的だったアナログの質感やサンプリングの存…

Mount Kimbie / Cold Spring Fault Less Youth

Mount Kimbieのサウンドを特徴付けるアナログ・シンセの音と共に、本作のオープニングを告げるのはサクソフォンの音色で、続くM2ではエレクトロニックなビートが、R&B調のヴォーカルの高揚に伴って生ドラム主体のソウルに遷移する。 M5は前作を踏襲するよう…

Mark McGuire / Along The Way

「Just To Feel Anything」に引き続きビートが本作の基調を形成しており、同作に於けるEmeraldsの変化はやはりMark McGuireの志向によるものであったと同時に、グループの瓦解のトリガーを引いたのがこのギタリストによる変容への欲望であった事を確信した。…

James Blake / Overgrown

ファースト・アルバムの成功の後でアーティストが取り得るアプローチは、前作の意匠や方法論を継承・発展させる方法と、全面的にそれを否定・捨象しドラスティックに変化させる方法との2つに大別されると思う。 何れにもそれぞれにリスクが伴うのは明白で、…

Autechre / Exai

耳障りな電子ノイズや硬質でインダストリアルでファットなビートは「Tri Repetae」や「Chiastic Slide」を彷彿とさせ、ポスト・インダストリアルと図らずもリンクしてしまったかのような印象を受ける。 同時に本作には「Amber」のアンビエンスが、「Confield…

10 Best Album Of 2012

1. Shackleton / Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs 2. Flying Lotus / Until The Quiet Comes 3. Actress / R.I.P. 4. Tim Hecker Daniel Lopatin / Instrumental Tourist 5. Ariel Pink's Haunted Graffiti / Mature Themes 6. Dean Blunt…